2019年1月1日
皆様、あけましておめでとうございます。
文化レガシーについて考えます。
路面電車も復活させたレガシーのリスボン
ポルトガルとの無形文化遺産つながり
先日訪れたポルトガルにはファドという伝統の民族音楽があり、2011年に無形文化遺産になっています。ファドとはファド歌手がポルトガルギターやビオラ(通常のクラシックギター)の伴奏の民族音楽です。ファドで歌われるテーマは郷愁や哀しみです。ポルトガル語で「Saudade(サウダーデ)」といいいます。
哀愁漂う首都リスボンのファド・レストランで聞いてみると薄暗いライト照明の元で演奏されていました。確かに独特の哀愁が漂っていました。
リスボンのファド・レストランにて
リスボンとポルトの中間にある大学都市コインブラは大学の中に世界文化遺産があり、ここには「学生ファド」というものもあります。コインブラ大学は13世紀に創立、ポルトガルの名門大学です。コインブラのファドは男子学生によってのみ歌われるらしい。
コインブラの学生ファドはリスボンのファドとは異なり、陽気な恋の歌が多いのが特徴だといいます。ファドの学生がまとう黒いマント、ポルトガル語ではcapa=カパと呼び、 日本の時代劇に出てくる渡世人さんがまとった「かっぱ」は、これが語源だというから興味深く、日本とのつながりはカステラだけではないようです。
(参照)https://www.tabisen.com/tabisen/tabi-concier/fb0129.html
国旗の向こうに見えるのが名門コインブラ大学、美しいまちづくり
コインブラ大学、マントをまとった学生たち
日本の無形文化遺産「来訪神」
昨年11月には日本にとっての朗報が相次ぎました。23日の大阪万博決定と29日のユネスコ無形文化遺産にナマハゲなど8県の「来訪神」が登録の2点は大きな意義があります。
まず「来訪神」。インド洋・モーリシャスで11月29日に開催された国連教育科学文化機関(ユネスコ)の政府間委員会は無形文化遺産に「男鹿(おが)のナマハゲ」(秋田県)など8県の10行事で構成される「来訪神(らいほうしん)仮面・仮装の神々」を登録することが決定しました。
9年前にすでに登録された「甑島(こしきじま)のトシドン」(鹿児島県)に、新たに次の9行事を加えて1つの遺産として申請していたものです。これで、登録合計は、国指定重要無形民俗文化財である「来訪神」行事で一覧表の 10 件となります。
・甑島(こしきじま)のトシドン(鹿児島県薩摩川内市)
・男鹿(おが)のナマハゲ(秋田県男鹿市) ・能登(のと)のアマメハギ(石川県輪島市・能登町) ・宮古島(みやこじま)のパーントゥ(沖縄県宮古島市) ・遊佐(ゆざ)の小正月行事(山形県遊佐町) ・米川(よねかわ)の水かぶり(宮城県登米市) ・見島(みしま)のカセドリ(佐賀県佐賀市) ・吉浜(よしはま)のスネカ(岩手県大船渡市) ・薩摩硫黄島(さつまいおうじま)のメンドン(鹿児島県三島村) ・悪石島(あくせきじま)のボゼ(鹿児島県十島村) |
来訪神は、次の特色があり、「変化の激しい現代に同じ行事を繰り返すのは難しく、続いていること自体に大きな価値がある」(文化庁)と指摘しています。
・季節の変わり目に異世界からの神に扮した住民が家々を巡り、災厄を払う民俗行事
・集落全体で伝承し、地域の絆を強める役割
・10行事はいずれも国の重要無形民俗文化財に指定、保護
・地域の素材で神の姿を可視化する豊かな創造性
SDGsとしては目標11「住み続けられるまちづくり」と目標4「質の高い教育」、そして目標17「パートナーシップ」などに直結するものです。
これでここ数年間の無形文化遺産の流れとして、和食、手すき和紙、祭りなどと並んで、日本の伝統の良さが世界のものとなった意義は極めて大きいです。
ポルトガルに学ぶレガシーのまちづくり
もう一つのニュースが「大阪・関西での2025年国際博覧会(万博)の開催が決定」でした。これは2020年五輪・パラリンピックと並び、グローバル社会の中で日本のサステナブルな価値観を示す絶好のチャンスです。大阪万博は日本企業の「サステナブル・ブランドSDGs」の絶好の発信の場となります。2025年には「太陽の塔」の時代とは全く違う「SDGsレガシー」をつくりSDGsの目標年次2030年に突き抜けていくチャンスの到来です。
ポルトガルはかつての栄光だけで生きているのではなく、力強いレガシーのまちづくりへのエネルギーを感じさせました。人口は1000万人ちょっとですが、過去のレガシーを現在に活かし始めています。また、1755年のリスボン大震災から復興のまちづくりを成し遂げたモデルでもあります。
発見のモニュメント:エンリケ航海王子の500回忌を記念して、テージョ川を前に1960年に建設
リスボンの繁華街