2022年5月30日
SDGs の認知度が上がり、官民各セクターでも SDGs が「主流化」している。 SDGs の重要効果の一つが「連携・協働により新たな価値を創造する力」だ。筆者はこれを「協創力」と呼んできた。最近、いろいろな分野や各地で「協創の鼓動」を感じる。いくつか連載したい。(千葉商科大学基盤教育機構・教授/ESG/SDGsコンサルタント=笹谷 秀光)
■観光魅力度ランキングで日本が1位
久しぶりに日本が自信を持てる調査結果が出た。世界経済フォーラムが発表した「観光魅力度ランキング」で、日本が1位を獲得した。2007年以降、各国の観光資源や交通インフラ、治安などを比較して、観光魅力度と観光産業の競争力をランク付けしているものだ。
日本は交通インフラの利便性や自然や文化の豊かさなどが評価され、初めて世界1位になった。トップ10は、日本、 アメリカ、 スペイン、 フランス、 ドイツ、 スイス、 オーストラリア、 イギリス、 シンガポール、イタリアだった。
新型コロナウイルスの感染拡大により大きな影響を受けた、観光産業の持続的な成長のためにも、この高い評価をうまく生かすべきだ。
■官民連携SDGsの「協創の鼓動」
最近、久しぶりに各地を訪れる機会が出てきたが、確かに各地で官民連携の工夫により魅力あるまちづくりの事例が見られる。新型コロナ禍という厳しい環境下で関係者が「自省」した上で様々な工夫を凝らしてきたかどうかの差が問われることになるだろう。
筆者はこれまでの産官学にわたる経験からSDGs を活用した「未来まちづくりフォーラム」の実行委員長を務めており次回は来年東京で開催されるが、そこで集まる情報からも、まさに「協創の鼓動」といったものを感じる。
■世界自然遺産を活用したまちづくり
SDGs目標11「住み続けられるまちづくり」は、英語では、Sustainable Cities And Communitiesだ。Communitiesの方がニュアンスが広いだろう。この目標のターゲット11.4「世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全」は、最も持続可能性が問われる項目だ。
2021年7月26日に自然遺産に登録された「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の西表島に行ってみた。登録理由の基本は「生物多様性」で、約1,200万年前~約200万年前におこった地殻変動や氷河期などによって島にやってきた希少な固有種が多数存在するという。随所にマングローブが見られる。
マングローブの流域面積日本一を誇る仲間川を遊覧船で見ることができ感動を呼ぶ。運航速度などでマングローブの保全に配慮し専門ガイドによる説明など工夫されている。
登録を勝ち取る過程で、官民連携の体制(世界自然遺産推進企業体、奄美群島地域における希少な野生動植物の密猟・密輸対策連絡会議等)も発足した。今後、海外からの旅行客も増えるので、4島・地域は、管理機関である関係行政機関に加え、地域の価値を守っていくためには、一層の努力が必要だ。
ちなみに、現在放送中のNHK の朝ドラの「ちむどんどん」は、同じく世界遺産に登録された沖縄本島北部(古くから「やんばる」という愛称で親しまれている)が舞台となっている。同じく朝ドラ「ちゅらさん」(2001年度上半期)の舞台は、西表島の隣の小浜島であった。こちらは、さとうきびの「シュガーロード」があるのんびりとしたエリアで、今でもロケ地にはそのサインが出ている。
発信性の高いドラマのロケなども含め持てる資源を最大限活用して、地域一丸となり、「協創」することが重要だ。
今後、この連載で協創の事例をいくつか紹介していきたい。