2023年2月10日
知事に聞く、秋田県が「大変革」する理由。SDGsがカギに
秋田県では、県内でSDGs 達成に資する優れた取り組みを行う県内企業などを表彰する「あきたSDGsアワード」を初めて実施。1月30日に表彰式が行われた。
このアワードに登壇した筆者は、佐竹敬久知事と懇談の機会をいただいた。今回はその話を交えながら、秋田県のSDGs戦略を紹介する。
佐竹敬久知事(左)と筆者
・秋田銀行
・秋田放送
・アルビオン白神研究所
・大仙市立大曲南中学校
・ブラウブリッツ秋田(プロサッカークラブ)
・ポークランドグループ(養豚、豚肉の加工販売など)
30日の表彰式では、受賞者のプレゼンと選考委員による講評があった。
それによると、秋田銀行は、地方銀行の役割が重視されている中で、「長活き(ながいき)」というコンセプトを掲げていることが評価された。単なる高齢者支援ではなく生涯学習機会を提供していることや「お困りごとサポート」サービスに特色があるという。
また、秋田放送は、全国のメディアに広がった「SDGsメディア・コンパクト」(国連へのメディアとしてのSDGs協力)の加盟メンバーとしての活動が評価された。秋田県でのSDGsの認知度向上に努めた。
そして大仙市立大曲南中学校は、県内唯一のユネスコスクール(ユネスコが認定する学校)であり、幅広くSDGs活動を行っている。大仙市自体もSDGs未来都市として認定されている。今後ここから“SDGsネイティブ”が育つことも期待される。
この他の受賞事例も、深いSDGsの実践を感じさせるものばかりだった。
日本政府が主催している「ジャパンSDGsアワード」もすでに5回の表彰が行われたが、こうした県レベルでの表彰は地元での影響力が強く、その効果にはとても期待している。
そのプランの中では、秋田が目指す将来の姿として「“高質な田舎”を思い描きながら、人口減少問題を克服し、将来にわたって持続的に発展していくこと」とされている。この「高質な田舎」という表現に特色がある。
なぜ「大変革」なのか。このプランを推進している佐竹知事はこう語る。
このアワードに登壇した筆者は、佐竹敬久知事と懇談の機会をいただいた。今回はその話を交えながら、秋田県のSDGs戦略を紹介する。
佐竹敬久知事(左)と筆者
“SDGsネイティブ”が育つ地域?
「あきたSDGsアワード」は、SDGs達成に向けた取り組みの普及・質の向上を促進することを目的に、本年度からスタート。今回は6つの企業・団体が選出された。一覧は以下の通り。・秋田銀行
・秋田放送
・アルビオン白神研究所
・大仙市立大曲南中学校
・ブラウブリッツ秋田(プロサッカークラブ)
・ポークランドグループ(養豚、豚肉の加工販売など)
30日の表彰式では、受賞者のプレゼンと選考委員による講評があった。
それによると、秋田銀行は、地方銀行の役割が重視されている中で、「長活き(ながいき)」というコンセプトを掲げていることが評価された。単なる高齢者支援ではなく生涯学習機会を提供していることや「お困りごとサポート」サービスに特色があるという。
また、秋田放送は、全国のメディアに広がった「SDGsメディア・コンパクト」(国連へのメディアとしてのSDGs協力)の加盟メンバーとしての活動が評価された。秋田県でのSDGsの認知度向上に努めた。
そして大仙市立大曲南中学校は、県内唯一のユネスコスクール(ユネスコが認定する学校)であり、幅広くSDGs活動を行っている。大仙市自体もSDGs未来都市として認定されている。今後ここから“SDGsネイティブ”が育つことも期待される。
この他の受賞事例も、深いSDGsの実践を感じさせるものばかりだった。
日本政府が主催している「ジャパンSDGsアワード」もすでに5回の表彰が行われたが、こうした県レベルでの表彰は地元での影響力が強く、その効果にはとても期待している。
「大変革」の背景に3つの要素
秋田県では、2022年3月に県政運営の最上位計画である総合計画を策定した。「~大変革の時代~ 新秋田元気創造プラン」という題名が示す通り、変革志向だ。そのプランの中では、秋田が目指す将来の姿として「“高質な田舎”を思い描きながら、人口減少問題を克服し、将来にわたって持続的に発展していくこと」とされている。この「高質な田舎」という表現に特色がある。
なぜ「大変革」なのか。このプランを推進している佐竹知事はこう語る。
「現代は、3つの大きな要素が重なった時代。高度情報化を基底とする第4次産業革命、地球温暖化に起因するCO2ゼロエミッション社会への挑戦、そしてパンデミックです。社会経済環境が大きく変貌することは必至ですが、我々は激動の時代に向き合わなければならないのです」
社会経済環境の変化とは、つまり次のような現象だ。集中から分散、クリーンエネルギー・グリーン化志向、多様性社会、デジタル化社会、健康志向、個の尊重、自然志向、人間性の回復など。こうした変化が激しい中で、SDGsをうまく活用していくという。
とても物腰の柔らかい佐竹知事だが、変革への決意は固いようだ。
事業活動などを通じてSDGsの達成に意欲的に取り組む県内の企業や団体、自治体などを登録・PRする「秋田県SDGsパートナー登録制度」は、2021年9月にスタートした。県内のSDGsの取り組みを「見える化」し、その裾野を広げたいという狙いがある。
「アワードの受賞者には、SDGsパートナーの皆さんの先頭に立って、SDGsの推進役として県内をけん引していただきたい」
ちなみに、このようなプラットフォームは全国各地の自治体で立ち上がってきている。本コラムでも過去に熊本県の「熊本県SDGs登録制度」を紹介した。秋田県のような、パートナー制度があり、企業などを登録・認証するタイプには、次のようなものがある。
・埼玉県さいたま市「さいたま市CSRチャレンジ企業認証制度」
・埼玉県さいたま市「CS・SDGsパートナーズ」
・神奈川県「かながわSDGsパートナー制度」
・長野県「長野県SDGs推進企業登録制度」
・岡山県真庭市「真庭SDGsパートナー制度・真庭SDGs円卓会議」
・山口県宇部市「宇部SDGs推進センター、宇部SDGsフレンズ」
こうした地域レベルでの連携のスキームは次々にできている。それぞれ特性があるので、自分の自治体についてぜひ調べてみてほしい。
筆者は以前から日本の「三方良し」のひとつである「世間良し」がSDGsにあたるとして、「発信型三方良し」を提唱してきたこともあり、この佐竹知事の言葉には共感した。
「あきたSDGsアワード」からの帰り道、秋田駅には「なまはげ」が飾ってあった。秋田県といえば世界遺産の白神山地(一部)も有し、豊かな自然・文化に恵まれた土地。
アワードの初開催でより勢いを増す秋田県。「高質な田舎」を目指すとともに、SDGs先進地域になることを期待したい。
社会経済環境の変化とは、つまり次のような現象だ。集中から分散、クリーンエネルギー・グリーン化志向、多様性社会、デジタル化社会、健康志向、個の尊重、自然志向、人間性の回復など。こうした変化が激しい中で、SDGsをうまく活用していくという。
とても物腰の柔らかい佐竹知事だが、変革への決意は固いようだ。
「SDGsパートナー制度」もカギに
「大変革の時代に、かけがえのない“ふるさと秋田”を大胆に前に進めるための政策のひとつが、SDGsパートナー制度です。これには、関係者の連携を促進する狙いがあります」(佐竹知事)事業活動などを通じてSDGsの達成に意欲的に取り組む県内の企業や団体、自治体などを登録・PRする「秋田県SDGsパートナー登録制度」は、2021年9月にスタートした。県内のSDGsの取り組みを「見える化」し、その裾野を広げたいという狙いがある。
「アワードの受賞者には、SDGsパートナーの皆さんの先頭に立って、SDGsの推進役として県内をけん引していただきたい」
ちなみに、このようなプラットフォームは全国各地の自治体で立ち上がってきている。本コラムでも過去に熊本県の「熊本県SDGs登録制度」を紹介した。秋田県のような、パートナー制度があり、企業などを登録・認証するタイプには、次のようなものがある。
・埼玉県さいたま市「さいたま市CSRチャレンジ企業認証制度」
・埼玉県さいたま市「CS・SDGsパートナーズ」
・神奈川県「かながわSDGsパートナー制度」
・長野県「長野県SDGs推進企業登録制度」
・岡山県真庭市「真庭SDGsパートナー制度・真庭SDGs円卓会議」
・山口県宇部市「宇部SDGs推進センター、宇部SDGsフレンズ」
こうした地域レベルでの連携のスキームは次々にできている。それぞれ特性があるので、自分の自治体についてぜひ調べてみてほしい。
「思いやり・つながり・もったいない」
佐竹知事の話で共感したのが「SDGsというのは、日本に昔からある“思いやり”“つながり”“もったいない”などと共通するので、SDGsのポテンシャルは高いと思う」という言葉。筆者は以前から日本の「三方良し」のひとつである「世間良し」がSDGsにあたるとして、「発信型三方良し」を提唱してきたこともあり、この佐竹知事の言葉には共感した。
「あきたSDGsアワード」からの帰り道、秋田駅には「なまはげ」が飾ってあった。秋田県といえば世界遺産の白神山地(一部)も有し、豊かな自然・文化に恵まれた土地。
アワードの初開催でより勢いを増す秋田県。「高質な田舎」を目指すとともに、SDGs先進地域になることを期待したい。
文=笹谷秀光