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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。オルタナ:「ポストSDGsを見据え、自治体と企業の協創相次ぐ

2025年1月17日

 

ポストSDGsを見据え、自治体と企業の協創相次ぐ


  1. 「SDGsおおたスカイパートナー」制度はポストSDGs時代を見据えたものだ
  2. 羽田空港からグローバルに発信できる大田区オリジナルの取り組みだ
  3. 自治体と企業の「協創」でイノベーションを起こし持続可能な社会を目指す

東京都大田区が実施する「SDGsおおたスカイパートナー」制度は、SDGsの達成に向けて取り組む区内事業者を大田区が認定し、持続可能な社会を目指す基盤づくりを目的としている。2024年12月23日実施の認定式で特別講演を行う機会を得たので、この制度の「協創力」形成の意義と参加事業者や関係団体に対しポストSDGsに向けた実践的なアプローチを伝えた。(千葉商科大学客員教授/ESG/SDGsコンサルタント=笹谷 秀光)

■ポストSDGs時代を見据えた「SDGsおおたスカイパートナー」認定式

SDGsおおたスカイパートナー認定制度は、SDGの達成に向けて取り組む区内事業者を大田区が「SDGsおおたスカイパートナー」として認定し、その活動を広く「見える化」するもので、第一回は98事業者を認定した。認定式は、地域内の事業者同士の連携を促進し、行政と事業者や関係団体が協働して持続可能な社会の構築を進める第一歩として行われた。

2030年までのSDGs目標達成と共に、今や、その先を見据えた「ポストSDGs」の視点が不可欠である。ポストSDGsでは、目標達成後も持続可能性を維持し、さらなる課題に対応できる社会システムの構築が求められる。

 

大田区は、「ものづくりのまち」としての伝統的な技術力と、「新産業を創造・発信するまち」としての革新性を兼ね備えており、これらを活かした長期的な持続可能性の確保が可能である。

例えば、区内に集積する高度な製造業の技術を活用し、環境負荷の低減や再生可能エネルギーの活用を進めることが考えられる。また、羽田イノベーションシティを中心とした新産業の育成は、次世代にわたる持続可能な経済基盤の構築に寄与する。このように、地域独自のイノベーションモデルを構築することは、ポストSDGs時代における重要な課題である。

■経済・環境・社会の三側面を統合するイノベーション

SDGs未来都市となった大田区は、経済・環境・社会の三側面を統合することで、持続可能な社会の実現を目指している。ポストSDGsでは、この三側面の課題を同時に解決するアプローチが求められる。大田区の「SDGsおおたスカイパートナー」制度は、これらの側面において高い相乗効果を生むための取り組みとして注目される。

例えば、区内企業が再生可能エネルギーを活用した製造プロセスを導入することで、環境負荷の軽減とコスト削減を実現し、同時に地域の経済活性化を図ることができる。また、社会面では、こうした取り組みを通じて地域住民の生活の質(QOL)の向上にもつながる。これらの相乗効果を持続的に生み出す仕組みを構築することが、大田区のポストSDGs時代に向けた挑戦である。

■羽田空港からグローバルに発信: 大田区オリジナルSDGsロゴマーク

大田区の強みは何よりも、羽田空港という国際的な発信拠点を有している点である。羽田空港は国内外から多くの人々が訪れる日本の玄関口であり、インバウンド需要も高い。これを活かし、大田区は地域内での取り組みをグローバルに発信する絶好の機会を得ている。

大田区では、区内在住・在勤・在学の方を対象にオリジナルSDGsロゴマーク案を募集し、87件の応募が寄せられた。その後、審査委員会による審査と投票を経て、高橋麻衣さん(当時、大森第七中学校2年生)の作品が採用された。このロゴマークは、「羽田空港の飛行機」をモチーフに、大田区が変わりゆく時代に力強く前進する姿を表現している。誰でも、「大田区オリジナルSDGsロゴマーク使用取扱要綱」および「マークガイドライン」を遵守して使用できる。

 

大田区オリジナルSDGsロゴマーク

大田区オリジナルSDGsロゴマーク

今後、羽田イノベーションシティを拠点としたSDGs関連イベントや展示を通じて、大田区の取り組みを世界中のビジネスパーソンや観光客に伝えることが可能である。さらに、インバウンド観光の増加を見据え、地域の伝統産業や文化をSDGsの視点で再構築し、持続可能な観光モデルとして発信することも期待される。こうした取り組みは、国内外でのSDGsの認知拡大とともに、大田区のブランド力向上にも寄与する。

■ポストSDGs時代におけるリーダーシップ発揮を期待

認定式に招かれた筆者は、大田区がSDGs未来都市として、区長の強力なイニシアチブのもと、行政・事業者・住民が一丸となって経済・環境・社会の三側面で取り組んでいる先進性について言及した。このような包括的なアプローチは、持続可能な社会の実現に向けた鍵となるだろう。

鈴木晶雅区長は、約15年ぶりの策定となった、新たな大田区基本構想(令和6年3月)で定めた、大田区の将来像である「心やすらぎ 未来へはばたく 笑顔のまち 大田区」をめざして誰もが住み続けたいより魅力的な大田区をめざすと発信されている。

 

鈴木晶雅・大田区長と筆者

鈴木晶雅・大田区長と筆者

まさにポストSDGsのウェルビーイングに向け、やすらぎ、未来、笑顔といった要素を盛り込んでいる。ポストSDGs時代においては、地域課題の解決だけでなく、グローバルな課題にも積極的に取り組むことが求められる。大田区は、国内外の企業や専門家との連携を深めることで、持続可能なイノベーションを生み出し、地域全体をより豊かで魅力的なものにする潜在力を持っている。

筆者はさらに、羽田を拠点とした大田区の取り組みが、国内外のSDGs推進において大きな影響を与える可能性を指摘した。特に、羽田イノベーションシティを活用した取り組みが、地域の魅力を世界に向けて発信するだけでなく、海外の先進事例を取り入れる受信性も高める点について触れた。こうした双方向の交流を通じて、大田区はポストSDGs時代におけるリーダーシップを発揮することが期待される。

 

講演する筆者

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