2017年12月18日
笹谷秀光の「協創力が稼ぐ時代」<第1回>
サステナビリティ新時代と「協創力」※月刊総務オンラインからの転載
2017-12-18 11:30
サステナビリティ新時代の到来
新年には、おせち料理を囲み、和紙に書き初めをし、テレビに映し出される富士山を見るという方も多いのではないでしょうか。これら日本人にとってたいへん身近な事柄は、すべてユネスコ(国連教育科学文化機関)の、和食(無形文化遺産)、手漉(てすき)和紙(無形文化遺産)、富士山(文化遺産)という文化遺産に関連します。
昨年はこれに日本の「祭り」も無形文化遺産に加わりました(18府県33件の「祭り」で構成する「山・鉾(ほこ)・屋台行事」が登録。すでに登録されていた京都祇園祭や日立風流物に加え、富山県のたてもん、埼玉県の川越氷川祭(通称:川越まつり)、高山祭の屋台行事などが登録)。
(筆者撮影:富山県魚津市「たてもん」)
また、「富岡製糸場と絹産業遺産群」や「明治日本の産業革命遺産」という文化遺産は、日本の近代産業集積の原点も登録されています。
そして、東京五輪・パラリンピック(以下、「東京五輪」)の招致にも成功しました。
個々の事項はご存じと思いますが、その底流にある共通項が重要ではないでしょうか。いずれもグローバルに通用する価値観に訴え、成功したのです。この価値観を理解することが、これからの日本の行方に関わります。
「持続可能性」。つまり、子孫につなぐ社会・環境という価値観です。
以上は、拙著「協創力が稼ぐ時代」(2015年10月発刊)の書き出しに加筆した内容です。いよいよ日本は持続可能性を世界標準で理解すべき「サステナビリティ新時代」を迎えました。
今、日本に求められているもの
「日本には、明日のことをきちんと考えられる能力があり、明日に向けて守るべき価値あるものがある」と世界に認められたわけです。これは非常に良いチャンスです。
2020年の五輪開催に向けて、政策課題も決まりました。地方を元気にする地方創生は2019年までが第1期。五輪のための国際都市東京を作る。そして五輪レガシーを遺す。これらあわせて「日本創生」です。2020年を一つの締め切りに —– これを「締め切り効果」といいますが —– 日本人全員で日本創生に参画すべきです。
国際都市東京 + 地方創生 + 五輪レガシー =「日本創生」です。
この数年間が、勝負の時です。
五輪は、世界が東京・日本に来ることを意味します。インバウンドへの対応として異文化コミュニケーションの強化も必要です。
また、ICT、IOTの著しい進化によって、動画サイトやSNSで瞬時に何でも伝わるうえ、様々な「モノ」にネットがつながり新製品・新サービスが生まれます。こうした、「新グローバル時代」はビジネスチャンスの宝庫ですが、成功するには、企業にも新たな競争戦略が求められます。
この特設サイトの狙い — 「協創力」の時代を読み解く
このサイトでは拙著『協創力が稼ぐ時代』の内容を敷衍して、最新の「経営感度を磨く、社会の読み方」を展開します。
お祭りの無形文化遺産登録にも協創力について多くのヒントがあります。なぜ祭りが登録されたのかを考えてみましょう。
祭りの出し物は、各地域の「文化の粋」です。山車のすばらしい飾り付けや、からくり人形やミニ歌舞伎などもあります。
漆など、それぞれの地域の特産品で作った材料を生かして、非常に地域に根ざしている。
祭りに山車を出すとなると、〇〇祭り保存会等の人たちがそれに向けて練習し、コミュニティの結束にもつながる。
そして何より、その地域で良いものを守っていこうという町のシンボルとして機能します。
以上から、コミュニティでの、関係者の「協創」による持続可能な無形文化遺産の保護・継承の事例として,国際社会におけるモデルとして認められたのです。
京都の祇園祭が代表的ですが、この他にも地域特有のお祭りが登録されました。各地のお祭りが認められたということですから、元気が出ます。インバウンドの観光客も増加すると思います。これを使って、まちおこしにも大いに活用していただきたいと思います。
これこそ、まさに「クールジャパン」です。「クールジャパン」とは、日本のいいものを発信していくこと。この「クール」は、クールビズのクールと同様に、「かっこいい」という意味です。
日本の歴史と伝統・文化に根付いたものや和食から、アニメ、「かわいい」等の最新のコンテンツや技術までありますが、「山・鉾・屋台」もクールジャパンの「塊」です。
クールジャパンとは、政府文書では日本人の自発的なクリエイティビティを国際社会で遺憾なく発揮してもらうための国民運動とされています。「相手をおもんぱかる」「クリエイティブ」「課題解決力」といった点がポイントです。