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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。経営感度を磨く社会の読み方<第15回> 地方創生に出遅れないために – ビジネス・チャンスの宝庫 –

2017年11月28日

経営感度を磨く社会の読み方<第15回>
地方創生に出遅れないために
– ビジネス・チャンスの宝庫 –

2017-11-28 08:10

「課題先進国」日本もいよいよ正念場を迎え、今後の数年間が勝負です。今回は、最近話題の地方創生、「まち・ひと・しごと創生」とは何かの早わかりとします。地方創生は「トリプルS」のそれぞれの「S」に密接に関連し、企業のすべての部署に関係します。

「地方創生元年」の「早わかり」

 「日本創生」「地方創生」とはどのような課題でしょうか。
 まず、人口減少問題です。発端は、自治体約1800のうち、人口減少で将来的に消滅する可能性がある自治体「消滅可能性都市」(2040年に20歳〜30歳代の女性数が半減する都市のこと)が約半数の896にも上るというショッキングな報告書が、2014年に「日本創成会議」から発表されたことです。
 一方、東京圏では年間約11万人の転入超過が見られます。ところが、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)は東京都が最低で1.15と全国平均(1.42)より低いのです。その結果、同会議座長の増田寛也氏によれば、東京圏が「ブラックホール」のように若者を吸収して出生率が落ちる、という構図を示したのです。
 今回の地方創生政策の特徴は、「人口減少」と「東京集中」という課題の両方の解決を目指していることです。このような背景の下、2014年末「まち・ひと・しごと創生法」が成立しました(図表参照)。
 東京への人口流入を抑えるため、地方で「しごと」を作って「ひと」を呼び、子育てしやすい「まち」を作る。地方創生が実現すれば地方で出生率が維持でき地方から若返るという考えで、このため、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を地方で確立することが急務となったのです。
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国際都市東京+地方創生=日本創生

 東京は「地方対東京」という対立ではなく、人口集中を緩和して過密を和らげ、世界に開かれた「国際都市」を作ります。地方創生で強くなる地方と「国際都市」東京が、それぞれの強みを生かして全体で「日本創生」を目指すという考えです。
 政府の政策は法律・予算・実行組織の3つから成り立っています。
 まち・ひと・しごと創生法に基づき、2060年に1億人程度の人口を確保するという「長期ビジョン」と、2015から2019年度(5か年)の政策目標・施策である「総合戦略」ができました。計画期間はちょうど東京オリンピック・パラリンピックの2020年ともリンクします。
 これを受けて、今まさに地方自治体はいっせいに「地方人口ビジョン」「地方版総合戦略」を作成中です。企業人も、自治体から意見を聴かれる機会が増えてくるでしょう。
 政府は、産業界・行政・教育界の「産官学」に「金労言」(金融・労働・メディア)を加えて、「産官学金労言」の結集を呼び掛けています。今後、日本創生・地方創生ビジネスを目指す企業は、社会課題への感度の違いにより大差がつくでしょう。政府の政策は網羅的で理解が難しい面がありますが、これを敬遠していれば「世間」に置いていかれます。

企業は社会的「感度」を磨くべし

 地方創生に企業はどう対応すべきでしょうか?
 企業の、「組織だった活動」「技術、ノウハウを有し、それを発揮する人員を有している」「本業と関連して投資も可能である」といった特徴を生かしていくべきです。そのためには、自治体等の関係者との対話の機会を増やして政策の理解を深め、関係者間の連携・協働の可能性を探ることが大切です。
 企業の留意事項としては、まず、政策の内容をよく理解し、自分の企業や地域に関係する事項を洗い出していきます。次に、自らの持てるヒト・モノ・カネや技術の内部環境を分析して、それを活用してどのような参画ができるか検討していきます。
 具体例で考えましょう。神戸市は「ワケトン」という環境キャラを活用して、「ワケトンエコショップ等認定制度」を制定し、2011年から実施しています。
 この制度は、廃棄物の発生抑制、減量化等に取り組む小売店を「ワケトンエコショップ」、廃棄物の再生利用に取り組む飲食店・旅館等を「ワケトンエコレストラン」として認定するものです。2015年6月末現在、エコショップは20グループ298店舗、エコレストランは5グループ8店舗が認定されています。これは、環境配慮企業であるという「お墨付きが得られる」制度です。すぐに申請を検討すべきでしょう。
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 また高知県は、観光政策で「おもてなしトイレ」に認定証を発行しています。これに関連するビジネスは、トイレメーカー、内装メーカー、清掃サービス、もちろん設置場所となる観光業、飲食業、お土産屋さん等の企業にも直結します。
 外国人観光客対策の多言語対応という政策は、外国語関係や翻訳サービスの企業のビジネスチャンスです。
 空き家対策では、ただちに住宅関連産業の出番でしょう。前に述べた自転車シェアでは、自転車、駐輪場機器はもちろん、料金決済・通信システム、監視カメラ等も関連します。このように、「自分ごと化」するとビジネスチャンスが見えてきます。

実践的情報分析

 もう一つ重要なのが、このような情報の収集と分析です。しかしこれは、企業にとっては時間的にも人的にもそう簡単ではありません。可能であれば、自治体サイドで、政策ごとに関連しそうな業界リストや関係業界での政策説明会等の「サービス」を提供することが期待されます。
 行政情報はホームページ等で発信されますが、行政のホームページビューは多くありません。そこで、きめ細かなメディアからの発信が有効です。
 また企業人は、「生」の情報に触れるため情報交換の場に赴くことも必要です。そして大事なことは、社内用に情報をわかりやすく加工して配信することです。今後、総務部、経営企画部、CSR推進部などの重要な仕事となるでしょう。
 今後、このコラムでは、企業や民間の方には「地方創生ビジネス」につなげるコツを、自治体・行政の方には民間の力を引き出すコツを示し、両者の「橋渡し」を試みます。

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(『月刊総務』2015年10月号より転載)
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