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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。経営感度を磨く社会の読み方<第9回> 新たな視点からの街づくり —産業集積による共有価値創造—

2017年8月29日

経営感度を磨く社会の読み方<第9回>
新たな視点からの街づくり
—産業集積による共有価値創造—

2017-11-27 18:40

今回は街づくりを新たな視点で見てみます。社会・環境への価値観を共有する関係者が効果的に産業集積(クラスター)を作ると、付加価値が創造されます。これは、ポーターのCSVの第三類型の産業集積CSVを応用する物の見方です。「クラスター」とはブドウの房のことで、産業クラスターCSVとはシリコンバレーなどのように、企業・機関・自治体などが集積することにより付加価値が高まるという考え方です。

東京スカイツリーのCSV

 東京スカイツリーは産業集積CSVの代表例です。東武鉄道が筆頭株主の東京スカイツリーが所有管理者で、電鉄会社の操車場跡地に誘致して建設されました。本業拠点活用により、関係者間で共有価値が創造されています。
 建設過程では法令手続き、行政・関係者調整がありました。完成後は高い話題性と、コミュニティにさまざまな影響がありました。ISO26000では、関係者と協働した「コミュニティ課題」のCSRに該当します。プロジェクトをリードした電鉄会社の本業の利益や企業イメージ向上にもつながっています。
 プロジェクト関係各社もそれぞれ、最先端の建設技術(大林組)、エレベ
ーター技術(東芝)、LED照明技術(パナソニック)などをアピールしています。これは開発過程で日本の技術力の粋を集めた産業集積が形成されたと理解できます。この結果、高さ世界一の新ランドマークタワーとなりました。
 建設後はソラマチや周りの再開発されたビルへの商業関連産業の誘致などにより、もともとの電波塔という機能に加えて新たな商業関連の集積に育ちつつあります。この商業集積力により、本業である鉄道事業への好影響や商業施設の活性化のみならず、地域の活性化と地価上昇という地域の価値向上にも大きく貢献しているのです。

「東京駅が、街になる。」

 日本の中心、東京駅を再開発するプロジェクトでは、東京駅が歴史的な姿のまま再生されました。「東京駅が、街になる。」というキャッチフレーズで、東日本旅客鉄道を中心に「東京ステーションシティ運営協議会」による取り組みが進行中です。歴史、伝統、文化、学術、ビジネス、先進性が融合した「世界で唯一の駅」を目指しており、現在求められる社会課題の要素が凝縮しています。
 この協議会には、JR東日本テクノハートTESSEIも参加しています。同社の新幹線での迅速・的確な折り返し清掃業務は、「7分間の奇跡(ミラクル7ミニッツ)」として、海外からも注目が集まりました。経済産業省選定の「おもてなし経営企業選」で2012年度に「日本の新幹線運行を支える心、さわやか・あんしん・あったか」として紹介されました。サービス業も街づくりに必須の要素です。

「大丸有」のエリアマネジメント

 東京駅周辺では、「大丸有」(大手町、丸の内、有楽町)という日本を代表するエリアで再開発が進行中です。東京駅の復元作業と並行し、丸の内周辺の街づくりについて関係者間で調整を進めた結果、かつての単なるオフィス街から、新たなにぎわいや景観・環境配慮の街になりました。関連テナントや企業の新たな産業集積が生まれています。
 この街づくりにより、丸ビル・新丸ビル等のビル街が一変しています。特に、有楽町から丸の内までの「丸の内仲通り」は、1階はおしゃれなブランド街を形成しています。ビルの外装は昔のままに、内部は最新のインテリジェントビル化する工法も採用されています。その一つが、東京駅の丸の内南口前に2013年3月にオープンした「KITTE(キッテ)」です。日本郵便による商業施設で、名前の由来は「『切手』を貼ると、郵便として大切な方に想いが届くのと同じように、商品やサービスに込められた想いまでもきちんと届けることができる施設でありたい」という気持ちです。1931年に日本最大の郵便局として建造された東京中央郵便局が、当時の姿を可能な限り残しながら生まれ変わりました。
 かつてオフィス時間が終了したらほとんど人通りのなかった街から一転、今や街路樹が美しい、人が集まるにぎわいの街になりました。開発会社は本業である都市開発を行い、優良企業をテナントとして誘致してビルの収入を得て本業の価値を確保しつつ、高付加価値の街づくりという新たな価値を創造しています。
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「3*3 LABO」というプラットフォーム

 これらの日本の新たなランドマークの形成は、プロジェクトに関係している企業、自治体、NGO・NPO、関係団体の関係者などによる連携と学習の賜物です。
 その代表例として、「環境共生型まちづくり」を目指すシンクタンク「エコッツェリア協会」(三菱地所などが会員)に事務局を置く研究会「3*3 LABO」(さんさんらぼ)が注目されます。3Rと3rdプレイス(家と職場以外の場所)づくりを目指すLaboratory の頭文字です。2011年にスタートした同研究会は、「モノづくりからコトづくり」を目指しています。優秀なファシリテーターやコーディネーターを擁し、筆者も登壇させていただいています。発信力も強く、丸ビルという場所柄から意識の高い日本の職業人の誇りに訴える効果も大きく、今後は世界にも訴えかける街づくりにつながることが期待されます。
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2014年11月、CSRイノベーションワーキングで講演する筆者。
配布された「おーいお茶」は「環境省選定ESD自由俳句」が掲載されている特別版
エコッツェリア協会ホームページより)

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 この研究会は、社会・環境などの価値観を共有する企業との間で相互刺激効果(シナジー効果)が生まれる、プラットフォームとしての機能を発揮しています。伊藤園も、社会貢献型の自動販売機と茶殻入りの容器回収ボックスを設置しています。
 直近の新たな展開では、千代田区のコミュニティ自転車「ちよくる」が注目されます。大気汚染防止、渋滞緩和、景観配慮などさまざまな共有価値が生まれる「自転車シェアリング」が、ついに東京の中心部でも始まりました。NTTドコモと連携し、2014年10月から「千代田区コミュニティサイクル事業実証実験」として実施しています。
 日本を代表する街として、またアジアにおける、世界における代表的な環境・景観配慮の都市としての方向性が目指されています。東京五輪・パラリンピックで世界を迎えるに当たり、このエリアが果たす役割は極めて大きいと思います。「本業CSR」とCSVの両刀使いで新たな共有価値を目指すという、まさに創造力(creativity)と想像力(imagination)とが問われる時代となりました。
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(『月刊総務』2015年4月号より転載)

 

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