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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。経営感度を磨く社会の読み方<第7回> 発信型の「三方よし」

2017年8月29日

経営感度を磨く社会の読み方<第7回>
発信型の「三方よし」

2017-11-27 18:30

新年を迎え、おせちを囲み、和紙に書初めをし、テレビに映る富士山を見られた方も多いでしょう。これらはユネスコの文化遺産に関連します。その保存と伝承には多くの人々の協力が必要で、わかりやすく内外に発信していくことが大事です。たとえば、「おもてなし」「もったいない」「さとやま」という三つの日本の伝統の言葉で考えてみるのです。」

シンポジウムのライブ感

 この3つの視点は、伊藤園企画の「みんなで学ぶ食と農のOMOTENASHI・MOTTAINAI・SATOYAMA」というシンポジウムのテーマです。ESDユネスコ世界会議の併催イベントで、昨年11月11日に名古屋国際会議場で開催しました。
 シンポジウムは、たとえばCDアルバムよりもライブ演奏の方が感動も大きいように、現場で弁士と聴衆の間で「共時性」が生まれ、より理解が深まります。弁士同士の即興による相互刺激が新たな発見につながることは、ジャズのライブなどに通じるものがあります。
 今回は、第8代ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏、静岡文化芸術大学学長の熊倉功夫氏(和食会議会長)、あいち海上の森センター名誉センター長のマリ・クリスティーヌ氏(国連ハビタット親善大使)、桜美林大学教授の馬越恵美子氏(異文化経営学会会長)、東京大学教授の鷲谷いづみ氏(「田めになる学校」校長)をパネリストに迎え、三菱地所株式会社開発推進部マネージャーの中嶋美年子氏が司会、筆者がプレゼンター兼ファシリテーターを務めました。
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左から、中嶋美年子氏、馬越恵美子氏、筆者、松浦晃一郎氏、鷲谷いづみ氏、
熊倉功夫氏、マリ・クリスティーヌ氏

和食とお茶のおもてなしを次世代へ

 初めに、伊藤園の「茶畑から茶殻まで」という本業を通じた関係者との協働による「持続可能な生産と消費」の事例を図表のESD伊藤園モデルに沿って筆者からご説明。また、「環境省選定ESD自由俳句」もご紹介しました。これを受けて、熊倉氏から、和食の無形文化遺産について次のお話がありました。
「”和食の危機”を乗り越え、そのすばらしさを次世代に伝承することが現在の課題です。和食は旬の食材を生かした健康に良いもので、一汁三菜とごはんの組み合わせです。もちろん、お茶も和食に欠かせません」
 「おもてなしの本来の意味は”ご馳走する”ことです。ご馳走は相手と自分とのコミュニケーションであり、互いに高め合うことがおもてなしです。私は茶の湯文化学会の会長も務めていますが、茶の湯はお茶を通じて相手のことを考え、同じ心を共有し、共有関係を築くことでもあります。従来の伝統に縛られるのではなく、新しい伝統を創っていく必要もあります。伊藤園の茶産地育成事業やティーテイスター制度は、新しいお茶の伝統を創る取り組みです」

マリ氏と馬越氏の掛け合い 「もったいない」

 マリ氏は、「アフリカにはアフリカなりの里山があります。持続可能なシステムとしての役割は世界中同じです。それをどう守るかがポイントです」と切り出されました。そしてマリ氏が名誉センター長を務める「あいち海上の森」について、「伊藤園も里山保全に継続的に参加していてすばらしい」といわれました。
 さらに、「『もったいない』も世界に伝えるべき考えです。英語に直訳すると“ It’s a waste.”ですが、このままでは『もったいない』に含まれるすばらしいニュアンス、日本人が培ってきた深い考えや感性が伝わりにくい。一方で折り紙は世界でも人気があり、茶殻折り紙はお茶の香りが五感を使った情操教育にも役立ち、わかりやすく『もったいない』の概念が伝わります。また英語俳句も外国人に人気があります」と、当社関連のご紹介がありました。世界中を訪問している異文化コミュニケーターの発言には説得力があります。
 馬越氏は、先日訪れた南極で、まっさらな地球の重要性をあらためて感じたそうで、「” It’s a waste, if wedon’t share.” 今こそ “地球がもったいない” という考えの下にシェアする視点が大切です」と、マリ氏の英語を受けての表現が出ました。異文化経営学会会長の立場から、「このような考えを企業の経営戦略に生かすべきです。”ダイバーシティ” や “異文化理解” が重要です。本日のパネリストも女性四人、男性三人とダイバーシティを感じられてすばらしい」との発言に会場も納得です。

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 伊藤園のフレーズcommuni”tea”(コミュニティー)については、「 “みんなで一緒にお茶を飲もう” という感じが出ていてすばらしい。世界中でもっとおいしいお茶が飲めるようになるよう、伊藤園には期待しています」と述べられました。

「里山」はホモ・サピエンスからの営み

 鷲谷氏は、「40億年の歴史の中の進化で生物が身に付けた戦略に学び、応用するためにも生物多様性を失わせてはならないし、人類ホモ・サピエンスの古い時代からの営みが今でも続いている場所が “里山” です。田んぼやその周りの里山に学ぶことが、子供たちの心に響く持続可能な開発のための教育につながると思います」と、ご専門の内容をわかりやすく説明されました。さすが子供向け教育プログラム「世界一田めになる学校」の校長です。

明日の地球に向けてみんなで学ぶ

 幅広いご経験のある松浦氏が次のように総括されました。
1)地球が危機にひんしている。「この地球(ほし)の未来を託すESD」という、お〜いお茶のパッケージに掲載されている「環境省選定ESD自由俳句」の未来大賞受賞の句がまさにこれを表している。
2)世界遺産はいかにそのままの形で守るかが重要。「人と自然の共生」という考えや「おもてなし」は日本の重要な伝統・文化である。「和食とお茶」は持続可能な生産と消費に関連する。無形文化遺産になった和食などを内外に伝えていく必要がある。今回、岡山、名古屋で世界会議が開かれ、特に発信面で意義が大きい。
3)「ESD伊藤園モデル」にはユネスコが求めている “政策への協力” “社内体制の整備” “実践する教育者の育成” “若者への継承” “地域活性化” の5要素がバランス良く盛り込まれており、企業や組織のヒントになる。
 会場からのご意見も受けて、中嶋氏よりまとめが発信されました。
1)「社会対応力」を磨き本業を通じて実践。
2)パートナーとの協働によりWin‐Win関係を構築。
3)人づくり、地域づくりのため、みんなで学ぶ。
4)今回のテーマのようにわかりやすく発信し、組織・企業が持続可能な社会の実現に貢献する。
 このまとめの1)がCSR、2)がCSV、3)がESDであり、本連載のテーマの「トリプルS」です。そして、シンポで取り上げた3つのテーマで企業・関係者・社会の間での「三方よし」が生まれていますね。
 「トリプルS」の経営戦略が人と人のつながりを強め「発信型三方よし」につながります。
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(『月刊総務』2015年2月号より転載)
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