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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。経営感度を磨く社会の読み方<第6回> 製品CSV早わかり

2017年8月29日

経営感度を磨く社会の読み方<第6回>
製品CSV早わかり

2017-11-27 18:25

今、企業は、グローバルな競争激化と東日本大震災以降の安全安心・絆・エコ志向という消費者の価値観の変化の中にいます。この中で、社会的課題の解決を通じて経済的価値も同時実現する新たな競争戦略が求められています。日本の伝統から見れば、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」です。この方向性の理論的体系として参考となる、ハーバード大学教授のマイケル・E・ポーターが2011年1月に提唱した共有価値の創造(CSV)のうち、「製品・市場の見直し」の側面について、身近なヒット商品の事例を分析していきましょう(図表1)
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ゴパン!

 「ジャパン!」「パン食兼美」「朝ゴパン」。そして、「日本人はやっぱりお米だ!」「お米の力で日本を元気に!」「地パン地消」というキャッチフレーズ。農林水産省のお米の消費拡大キャンペーンではありません。米粉や残りご飯を活用して米からもちもち感のある米パンを作ることができる「GOPAN(ゴパン)」(ホームベーカリー機器)です。食料自給率向上の表彰である「フード・アクション・ニッポンアワード」(主催:同アワード実行委員会、共催:農林水産省)で、2010年の大賞を受賞しました。
 ネーミングもコンセプトも優れていますね。2010年のヒット商品番付(日経MJ)で「技能賞」を取った優れものです。初代製品は三洋電機製、二代目以降はパナソニック製です。米の消費拡大、食料自給率向上という社会課題に対し、直接的に本業の技術を結集して解決策を示した点が消費者に受け入れられ、爆発的ヒットとなり、現在は定番商品化しています。「製品CSV」の代表例で元祖といえるでしょう。
 技術面では、これまでのパン焼き機の技術を最大限に磨き上げて本格的に取り組み、最終製品は5万円程度とかなり高いものになりましたが、技術が結実し付加価値製品が生まれたのです。
 マーケティング展開も、主たる訴求ターゲットである子育て世代だけでなく、団塊世代などの社会的共感に訴えました。販売チャネルとも連携して事前の話題作りなども行い、爆発的な人気につながりました。
 その結果、社会には食料自給率向上という価値が生まれ、消費者にとっては米でパンが焼けるという価値が生まれ、企業にとってはヒット商品が生まれて話題を呼び、新たな「定番」家電製品が誕生するという共有価値の創造が実現したのです。
 伊藤園では、飲料を通じて製品CSVを推進しています。健康志向に対応して研究機関と連携しつつ、特定保健食品(トクホ)として、カテキン入りの緑茶・ウーロン茶・ジャスミン茶のシリーズを開発・販売しています(※)。
(※)伊藤園のCSVについては、最近刊行された2014年版CSR報告書で特集していますので、当社のCSRホームページをご参照ください
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「機能性掃除機」戦争勃発か!

 家電に関しては、機能性掃除機を巡る戦争勃発でしょうか。昨年のヒット商品番付では海外企業からの新製品が目立ちました。
 新技術を駆使した英ダイソン社のサイクロン掃除機や米アイロボット社のロボット掃除機「ルンバ」など、日本でシェアを伸ばす外国製品が注目を浴びています。
 レイコップ・ジャパン(韓国ブカンセムズ社の日本法人)は、ハウスダストやダニをふとんから取り除くふとん専用掃除機「レイコップ」(韓国人医師が開発に参加)が話題です。掃除機ではありませんが、フィリップス社の「ノンフライヤー」も、油を使わないフライヤーとして健康志向に訴え話題を呼びました。
 これらは、「あるようでなかった」、「かゆいところに手が届く」商品開発を行った「製品CSV」です。
 伊藤園は、野菜飲料で、長期常温保存可能な「新・環境配慮型アルミレス紙容器」を採用をしています。従来の紙パックからアルミを除去して牛乳パックと同様のリサイクルができます。この取り組みは、平成26年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰の農林水産大臣賞を受賞しました(日本製紙株式会社・凸版印刷株式会社と共同)。同賞はリデュース・リユース・リサイクル推進協議会主催で、受賞名は「持続可能な消費を実現した、常温流通可能な新・環境配慮型紙パック飲料容器」です。これは容器の面からの「製品CSV」です。
 トヨタ自動車は、ハイブリッドカー「アクア」(ラテン語で「水」の意味)の販売促進に際し、全国50のNPO(非営利団体)との連携で水質保全活動を行い、権威あるフランスの国際広告賞「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」のメディア部門で金賞を受賞しました(2013年6月)。
 このエコカーは、震災支援のため岩手の工場で生産されています。
 さらに、社会・環境と消費者には、エコカーという環境価値に加え、水質保全という新たな環境価値を創造しています。企業には、プリウスに次ぐ新たな定番商品を育てることができ、商品や企業のイメージを向上させるという共有価値の創造が見られます。
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製品CSVのまとめ

 これらの例でおわかりの通り、製品・市場側面のCSVは、自社が有する本業の強みや技術の種(シーズ)を生かしつつ社会的課題に対する解決を目指すという考え方で、これにより新たな製品やサービスが生まれるのです。
 ポーターが競争戦略で主張している通り、企業は、内部環境を分析して自社の強み・弱みを認識する一方、自社を取り巻く外部環境、特に競合企業に対する強みも十分に認識しておく必要があります。
 企業が内にこもっていると、なかなか新たな価値につながりません。外部からの刺激を受けて新たな展開を目指すのです。起爆剤として社会的課題に目を向けようという考え方であり、起爆剤とするには、社会的課題に関する情報収集力と、そこから得られた社会的課題の分析力、課題についての洞察力が必要となってきます。
 社内では、セクショナリズムに陥らずにオープンなブレーンストーミングを行うなど、資源を最大限に活用する必要があります。その上で、自社グループや、異業種との交流による刺激も有益です。
 企業が以上のような力を付けるには、CSRの課題と関連付けた社会の動きに対する感度(社会対応力)、次に、ウィンウィン関係を構築する力(CSVを生む工夫)、そして、グローバルな製品競争の時代に対応できる人材育成力が重要です。
 これがまさに、「”トリプルS”の経営戦略」です。これまで5回にわたりシンボルで表示してきた内容を、横文字を使わずにわかりやすく再整理すると図表2の通りとなります。
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(『月刊総務』2015年1月号より転載)
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