2019年12月15日
NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「スカーレット」で話題の信楽(しがらき)に行ってみた。朝ドラのような視聴率の高い番組をSDGs メガネで見ると、興味深い。陶芸の町、信楽は話題が満載だった。
- 電車活用のSDGs
京都からJR琵琶湖線、JR 草津線を乗り継ぎ、貴生川駅乗換えで信楽高原鐡道に乗る。信楽高原鐡道は地元密着型の鉄道会社であり、今回の NHK 朝ドラ「スカーレット」について、車両全面に主演の女性陶芸家を演じる戸田恵梨香さんの写真をあしらったラッピングカーを走らせている。
最近電車のラッピングが盛んだ。電車は目立つので広告的な訴求効果が高い。
SDGsのラッピング列車も話題だ。阪急阪神ホールディングスは2019年5月に、SDGs 啓発メッセージを発信するラッピング列車を公開した。2020年5月末まで阪急神戸線や阪神本線などを走る。両電鉄共通デザインのラッピング列車は初めてだという。
これは、阪急阪神ホールディングスの社会貢献活動「未来のゆめ・まちプロジェクト」が10周年を迎えるのを機に企画された。ラッピング列車は先頭と最後尾の車両に、SDGs をイメージする人物や生き物をデザインしている。車両内ではSDGs の17目標を解説するポスターを掲示している。
最近では JR東日本がSDGs ラッピングトレインを2019 年 10 月 18 日~2020 年1月末(予定)に運行している。 車体および車内の吊手に SDGs の 17 のゴールのアイコンを表示、 SDGs 各ゴールの解説や、SDGs 達成に向けた当社グループの取組みを、ポスター、トレインチャンネルなどで紹介している。
一定の速度になると前面行先表示器(最後尾車両)に SDGs の文字を表示するという凝りようだ。外務省・国連広報センターの後援を得ている。筆者も先日乗り合わせたがかなり訴求力が強い企画であると感じた。
- シンボル活用
信楽駅に着くと、早速、信楽焼の名物であるたぬきの陶芸が出迎えている。信楽観光協会のマスコットキャラクターは、「ぽんぽこちゃん」という狸がキャラだ。
信楽焼の狸は網笠をかぶり、右手に徳利、左手に通帳をもって立っているのがよくある姿である。観光協会のサイトでは、信楽の狸には「八相縁起」があると紹介されている。
笠 思いがけない災難を避けるため用心
大きな目 周囲を見渡し気を配り正しいい判断
笑顔 いつも笑顔を忘れず、お互い愛想よく
徳利 人徳を身に着けよう
大きな腹 冷静さと大胆さ
通い帳 信用が第一、世渡りに欠かせない帳面
金袋 金運を身につけよう
太いしっぽ 何事も終わりは大きくしっかり
(信楽観光協会 http://www.e-shigaraki.org/knowledge/ より)
今後はこのようなストーリーを掘り起こすと訴求力が強い。つい他の人に話したくなる。質の高いストーリー手リングが求められている今の時代に先人たちの作ってきたから語りが生きる。
- 記念日パンフレットから読み解く
この「八」にちなんで、信楽では11月8日が、「いい八」とのゴロで、「信楽たぬきの日」にしている。駅に置いてあった「信楽たぬきの日」のパンフレット一枚から今の信楽の関係者がわかる。
今年のイベントの主催者は「信楽たぬきの日実行委員会」「信楽観光協会」で、後援名義に関係者の広がりがうかがえる。主な後援者を地方創生の「産官学」にメディア(言)の分類で並べてみる。
産:甲賀市商工会、信楽焼振興協議会、信楽陶芸工業組合、信楽陶器卸商業協同組合、信楽高原鐡道株式会社、石山観光協会、伊賀上野観光協会
官等:甲賀市、甲賀市観光協会
学:甲賀市教育委員会、日本たぬき学会、歴史街道推進協議会
言:KBS 京都、 FM802、NHK 大津放送局、 BBC びわ湖放送
これに協力として新宮神社が加わっている。
信楽たぬきの日PR大使もいる。「滋賀県すみます芸人」で吉本興業の芸人の写真も出ている。
(http://www.e-shigaraki.org/tanuki/ より)
この通りかなり広範に関係者を巻き込んだまちづくりが進んでいることがわかる。
SDGsで言えば目標17の「パートナーシップ」だ。
拙著「Q&A SDGs経営」でも、このような「パートナーシップ」の事例として、富士山世界遺産とSDGs、SDGsの地方創生ビジネスへの応用(企業と大学と石川県白山市)などを紹介し分析している。
「Q&A SDGs経営」
※ 近く、オルタナ・ヤフーで掲載予定。