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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。朝ドラとSDGs(その2)

2019年12月17日

朝ドラとSDGs(その2)

NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「スカーレット」で話題の信楽(しがらき)では徹底的に各種制度を活用している。今後、様々な制度や先人の知恵を統合していくときに役立つのが共通言語SDGsである。陶芸の町、信楽を参考に今後の日本のSDGs的なポテンシャルを探る。

駅に置いてあった「信楽たぬきの日」のパンフレットの下部には日本遺産のロゴがある。

信楽は2017年度の日本遺産に登録された「日本六古窯(にほんろっこよう)」の一つだ。日本六古窯は中世から今日まで引き継がれている焼き物の産地、「備前・瀬戸・常滑・越前・丹波・信楽」の全国6か所の総称である。

日本遺産制度は、インバウンドも含め世界にも遡及できるストーリー性のある日本の遺産(レガシー)を認定する文化庁による制度で、現在83件。五輪パラリンピックまでに100件程度まで増やす予定だ。この「ストーリー」というところが現代の体験型の時代にマッチしている。

日本六古窯は「STORY #050」であり、「きっと恋する六古窯-日本生まれ日本育ちのやきもの産地-」という題名だ。

この日本遺産のサイトはよくできている。6産地の案内があるが、信楽の解説は次の通りだ。

面積:481.62km²、総人口:91,306人(甲賀市・2017年2月現在)、気候:平均気温 12.3℃、年間降水量 1,723mm(2017年)、名産:窯業、薬、朝宮茶、土山茶ほか、やきもの事業所数:79、就業人数:486人(2016年、(全盛期[1992年12月]の事業所数:135、就業人数:1303人)、古く甲賀は、「鹿深」「甲可」と書き、いずれも「カフカ」と呼称。信楽は、『正倉院文書』に「信楽」と表記されている。甲賀流忍者発祥の地。

信楽の所在する甲賀市(こうかし)のホームページには、日本遺産に認定されたストーリーを構成する次のような文化財の一覧が示されている。こうした文化財や関連する地域資源を活用し、地域活性化を図る。

信楽焼窯跡群、信楽焼、古信楽、江戸時代の信楽焼、近代信楽焼製品、岡本太郎作品(信楽の技術に注目した岡本太郎は、信楽で大阪万博のシンボル「太陽の塔」の背面の「黒い太陽」など作品の制作を行った。太陽の塔の顔レプリカや今も人気を博している《坐ることを拒否する椅子》は信楽伝統産業会館で常設展示されている)、古琵琶湖層、信楽たぬき(昭和26年(1951年)、昭和天皇が行幸された際に、信楽たぬきを並べて奉迎した。これが報道を通じて注目されて信楽たぬきは全国的に知られるようになったといわれる)、窯元散策路(信楽の町は産業景観、なかでも伝統産業によって形成される集住・産業・街区景観である)、信楽火まつり、陶器市

岡本太郎や信楽たぬきも構成要素に入っているところが興味深い。信楽にかかわる事柄の総棚卸が行われているといえる。

日本六古窯なので、信楽焼での取り組みは、今後、他のやきものの町にも波及していく。 SDGs 原則の一つである「普遍性」に期待ができる。つまりベストプラクティスの水平展開が行いやすい。

なお、甲賀市は甲賀流忍者発祥の地でもあり、もう一つの日本遺産にも指定されている(「忍びの里 伊賀・甲賀~リアル忍者を求めて~」)。

「近畿の駅百選」に認定されている信楽駅を出て信楽の街並みを歩いてみると、様々な制度が活用されている。

Pic) 近代化産業遺産丸又窯(筆者撮影)

「丸又窯(まるまたかま)」は近代化産業遺産(2007年度、経済産業省)認定だ。これは経済産業省の制度で、我が国の産業近代化の過程を物語る存在として、数多くの建築物、機械、文書の役割や先人たちの努力など、豊かな無形の価値を今に伝えている。これらの歴史的価値をより顕在化させ、地域活性化の有益な「種」として、地域の活性化に役立てることを目的として、「近代化産業遺産」として大臣認定する仕組みだ。

2007年度、2008年度において、地域史・産業史の観点から、それぞれ33のストーリーとして取りまとめた「近代化産業遺産群33」「近代化産業遺産群 続33」を公表した。

「丸又窯」は滋賀県指定史跡「信楽焼窯跡群」の一つでもある。

文化庁の日本遺産が、滋賀県や経済産業省の制度も含めて文化の「プラットフォーム」(共通基盤)になっているわけである。この登り窯は連房式で11室ある。1933年から1963年まで使われていたという。

信楽焼は「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(「伝産法」昭和49年5月25日法律第57号)による「経済産業大臣指定伝統的工芸品」である。少しややっこしいが、伝統工芸品ではなく、伝統「的」という名称が法律の指定によるものだ。

伝統的工芸品とは、手工業的で、伝統的な技術又は技法により製造され、主たる原材料等も伝統的なものであり、一定の産地が形成されていること。それらを踏まえ、100 年以上の歴史を有するものを、国が指定する。現在、指定品目数としては 230以上に上る。陶磁器は32指定されている。

伝統工芸士は、伝産法第24条第8号に基づいて伝統的工芸品産業振興協会が行う認定試験で付与される。伝統工芸士は現在 4000 人強がおり、近年は女性の伝統工芸士が増加傾向にある。

信楽焼の売り場をよく見ると伝統工芸士による作品が多い。

窯元散策路が整備されており、作業の見学開放も行っている。体験型の見学ができ、陶芸の体験コーナーを持っているやきもの事業所も多い。

随所に、朝ドラロケ地紹介パネルやポスターが貼ってある。今後は朝ドラのロケ地であったことも日本遺産のストーリーの構成要素に育っていくかもしれない。

Pic) 丸熊陶業、「スカーレット」ロケ地の表示とポスター掲示(筆者撮影)

朝ドラはロケの各地の活性化に役立っているが、ドラマ終了後の活用の仕方に差が出ているように見える。「あまちゃん」(2013年度上半期)の舞台は架空の町だが、主なロケが行われた岩手県久慈市・小袖海岸の「北限の海女」や、三陸鉄道北リアス線が話題となり、今でもまちづくりに使われている。

朝ドラは、まちおこしに直結するストーリーが多いので、SDGsを意識して番組作りをすると、日本でのSDGs認知度アップに大いに役立つのではないか。各回の終わりには番組の案内や視聴者からのメッセージコーナーがあるので、SDGs11「住み続けられるまちづくり」やヒロインが活躍するSDGs5「ジェンダー平等」などがクローズアップできるであろう。今回の「スカーレット」はこれにSDGs9「産業と技術」が加わるだろう。

最近ドラマの中で、直接的にSDGsを取り上げたのが、テレビ東京「ハル~総合商社の女~」の第7話である(2019年12月2日(月)に放送)。商社が社会課題解決型のビジネスを行う内容で、主演の中谷美紀さんがSDGsをパネルで説明するシーンは話題を呼んだのではないか。

テレビ会社ではドラマ作りも本業の重要な一角である。発信性の強みを発揮したSDGs対応が可能である。今後様々な工夫が広がることが期待される。

また、大学の役割も大きくなっている中で、甲賀市と包括連携協定を結んでいる立命館大学では「SDGs地域共創型プログラムむらのこ」を実施している。他大学の学生や高校生も加わり、甲賀市をフィールドとして、4つのテーマに関する地域創生アクションプランを発表した(2019年2月3日、同市「フォト日記」より)。

以上のように、様々な制度も使い、人々のパートナーシップの芽が出て、発信力も強い。陶芸の町、信楽を見て、日本のSDGs的なポテンシャルの高さを感じ、他でも応用可能だと感じた。

 

 

※オルタナ・ヤフーでも掲載

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