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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。持続可能なSDGs消費とは何か

2020年4月7日

持続可能なSDGs消費とは何か

SDGs の目標12「持続可能な生産と消費」は、英語では、「Sustainable consumption and production」である。「SDGs経営」の時代において、経営として消費者にどう対処していくべきかを考えたい。

SDGs の目標12「持続可能な生産と消費」は不思議で、原文の英語では消費が先で、「Sustainable consumption and production」である。つまり思想としては消費者に選ばれないようなものはつくらなくてよいとのメッセージが根底にある。

この目標には、次のターゲットがある。

「12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。」

SDGs経営では、消費者への商品・サービスの提供にあたっては、消費者のライフスタイル変革のけん引役になることが期待されているのである。

このターゲットに関する指標が興味深い。次のとおりである。

12.8.1 気候変動教育を含む、(i)地球市民教育、及び(ii)持続可能な開発のための教育が、(a)各国の教育政策、(b) カリキュラム、(c) 教師の教育、及び(d)児童・生徒・学生の達成度評価に関して、全ての教育段階において主流化されているレベル

つまり、指標としては、消費者「教育」の視点で作られている。

実は、この指標は、目標4「質の高い教育」のターゲット4.7と表裏一体である。

「4.7  2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。」

この中に「持続可能な開発のための教育」(ESD: Education for Sustainable Development)と併記して、「持続可能なライフスタイルへの貢献のための教育」があげられているのである。このターゲットに関する指標は次のとおりである。

4.7.1 ジェンダー平等および人権を含む、(i)地球市民教育、及び(ii)持続可能な開発のための教育が、(a)各国の教育政策、(b) カリキュラム、(c) 教師の教育、及び(d)児童・生徒・学生の達成度評価に関して、全ての教育段階において主流化されているレベル

このように、上記の目標12の指標12.8.1とほぼ同じである。

では企業はこれにどう対処していくべきか。目標12の指標「12.8.1」自体は、目標4の指標とも関連しているものの、消費者「教育」の視点のみであることが気になる。企業としては、教育の視点だけでなく、消費者のライフスタイルを変革するための積極的な情報提供、提案や商品開発にも踏み込んでいくべきであろう。

トヨタ自動車は、2015年に長期目標「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表。新車CO₂ゼロチャレンジ、ライフサイクルCO₂ゼロチャレンジなどの「6つのチャレンジ」は、意欲的な内容で、内外からの評価を高めた。

その後2017年に、SDGs の目標年次2030年に合わせ、「2030マイルストーン」を発表し、同社の「サステナビリティ・データ・ブック2018」では、6つのチャレンジについてSDGs 目標6、7、9、12、13が示されていた。

これが一気に進化した。最新の「同ブック2019」(2019年9月公表)では、6つのチャレンジに対応するSDGsがすべてターゲットレベルで示された。

特に、「2:ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ」(車ができてから廃棄されるまでのCO2)ではSDGs目標13「気候変動」のターゲット13.1(CO2削減)に加え、目標12「つくる責任つかう責任」のターゲット12.8「持続可能なライフスタイル」が示されていることが注目される。

このトヨタの目標12のターゲット12.8「持続可能なライフスタイル」は重要だ。トヨタは「自動車」の会社から「モビリティ」の会社への変革を推進しており、サステナブルな「モビリティ」を提供し人々のライフスタイルの変革に貢献するという内容を、SDGsとして示すと、ターゲット12.8になるのであろう。

消費者の共感を得て成功している製品・サービスをよく見ると、本業を生かして、経済価値と社会価値の同時実現を目指す企業の競争戦略が功を奏している。その秘訣は、SDGsに真摯に向き合い、社内・社外のさまざまな関係者との連携で気づきを得て、イノベーションにつなげることである。

例えば、東京海上日動火災保険のマングローブ植林活動が興味深い。保険に加入すると、約款という厚い冊子が送られてくるのが一般的だが、保険会社のホームページ上で約款を見ることができるシステムの採用が増えている。

契約者がウェブ約款を選択すると、紙資源の消費が削減される。この費用の一部

をNGO(非政府組織)との協力によってマングローブ植林などにつなげているのが、東京海上日動火災保険の「Green Gift」プロジェクトの活動だ。

単に寄付するのではなく、約款という本業の根幹のところで工夫し、紙資源消費の削減をマングローブ植林につなげるという環境つながりのストーリー性を出している。そして、消費者に選択させて「気づき」と「学び」の機会を提供しているところがポイントである。

約款という保険の本業の工夫で関係者との「協創」により商機につなげているが、これをSDGs 目標15 「陸上資源」と結びつけることでより発信性が強くなり、保険商品という身近な商品を通じて消費者の選択に役立つ。

消費者との関係から見れば、目標12「持続可能な生産と消費」のターゲット12.7に関するサービス業でのバージョンだと理解することができる。

2011年に延期になったが、東京オリンピック・パラリンピックでの東京五輪組織員会が決めた「持続可能性に配慮した調達コード(第3版)」という調達のルールを定めた文書においては、「持続可能な消費及び生産のパターンを確保する」というSDGs目標12の重要性を強調している。

そのうえで、企業や公共部門の持続可能な調達を通じて、社会の消費・生産パターンの変革につなげていくことが、五輪のあとによい仕組みや施設を残していくことが、五輪レガシー(遺産)であるとしている。

具体的には、企業は「調達コード」に準拠するCSRに取り組む。企業が持続可能な調達を行えば、今後、国際的に持続可能性への対応が求められていく中でその競争力を高めるメリットもある。また、東京都をはじめとする自治体や国が、「調達コード」で公共調達をする。これにより、東京五輪後も持続可能な消費・生産に向けた取り組みを社会全体に広げていく。

日本人、日本企業は、五輪調達コードをよく理解しなければ、東京五輪後に置いていかれる危険性が高い。「いつの間にこのような調達コードが決まったのか」ということになってしまう。

消費者庁は「消費者志向経営」を推進している。一定の要件のもとで自主宣言する(2019年8月末現在、同社を含め116事業者が宣言)。消費者庁ではSDGs も意識しており、この言葉とともに「サステナブル経営」という愛称を活用している。

消費者志向経営の取組を周知・広報し、消費者に広く認知してもらうため、消費者志向経営ロゴマークが作成されている。消費者志向自主宣言を公表し、かつ消費者庁ウェブサイト内の推進組織ウェブページに掲載されている事業者が使うことができる。

消費者庁のサイトを見ると、消費者志向経営では消費者との間で持続可能なライフスタイル構築に向けた様々な「協創」が行われていることがわかり、SDGsターゲット12.7に寄与する仕組みである。

 

(Pic )消費者志向経営のロゴ(消費者庁HPより)

 

2020年6月9日(火) 13:30~16:30  金融ファクシミリ新聞社セミナー

『Q&A SDGs経営』発刊記念特別講座・SDGs経営時代の企業サバイバル戦略―【経営層、中堅幹部限定】、SDGs実践のツボ早わかり―

(場所)東京東京都中央区日本橋小網町9-9 小網町安田ビル2階

電話 03-3639-8858

https://www.fngseminar.jp/seminar/index.php?p=detail&num=4248&ot=

 

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