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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。政策そのものになったSDGs

2020年7月27日

笹谷秀光です。今回は、政策そのものになったSDGs、です。

私もかつて農林水産省で31年勤務し、その間、外務省に3年、環境省に3年、出向いたしました。

外務省ではでワシントン DC にの在米国日本大使館で勤務し、牛肉・オレンジ交渉などを経験いたしました。環境省では地球温暖化対策やクールビズ政策なども担当しました。

今は、行政は、新型コロナウイルスの関連で大変厳しい状況に置かれていますが、 SDGs を通じて政策を見ていると、SDGsがまさに政策そのものになったと実感いたします。その点について考えてみました。

■ 政策そのものになったSDGs

SDGs は完全に政策そのものになりました。それも政策の「主流」です。「主流化」というのは、単なる参照事項や「枕言葉」ではなく、 SDGs の推進自体が重要な政策になったのです。

SDGsの主流化は、政策や予算の大枠を決める、いわゆる「骨太の方針」という政府の重要文書での SDGs の扱いにも表れています。最新の「経済財政運営と改革の基本方針2020」でも「5.新たな世界秩序の下での活力ある日本経済の実現」の項目の中で、「持続可能な開発目標(SDGs)を中心とした環境・地球規模課題への貢献」が盛り込まれています。

現在は SDGsと関連付けなければ予算がとりにくい、制度が設計しにくいという流れが加速しています。各府省は、 SDGs の先陣争いを展開しています。政府のSDGsの重点は、Society5.0の推進、地方創生、次世代育成・女性活躍の3つです。

SDGs がさまざまな政策に取り入れられる中で、全閣僚メンバーから構成される政府の SDGs 推進本部が、2017年に自治体についても SDGs を重要な推進要素にして、中でも18年度から発足した「SDGs 未来都市制度」と「SDGs 未来都市モデル事業」が重要です。

■ SDGs未来都市

SDGs 未来都市の代表事例が静岡市です。静岡市は、健康長寿のまちの推進、まちは劇場の推進、教育文化の拠点づくり、歴史文化の拠点づくり、海洋文化の拠点づくりの「5大構想」にSDGsを組み込むことで「『世界に輝く静岡』の実現」を加速化を図ることをねらいます。

田辺信宏市長を本部長とし、各局の局長級職員で構成する「静岡市創生・SDGs推進本部会議」を設置しています。7月には、田辺市長と懇談し、2020年度第1回静岡市創生・SDGs推進本部会議で講演させていただきました。まさにテーマは、「ポストコロナとSDGs」でした。

発信性も強く、すぐに次の日の静岡新聞で概要が記事になりました。今後の世界への発信力を期待したいと思っています。

静岡市 田辺信宏市長と

SDGs 未来都市は、18、19年度で60の自治体が選定されていました。先日、7月17日、20年度の選定があり、33都市(34自治体)が選定され、合計94自治体に達しました。

2019年12月に発表された「第2期まち・ひと・しごと総合戦略」では、SDGsが重要な横断的目標として位置づけられました。SDGs は「主流化」し、2019年の内閣府の取りまとめによれば、地方創生のSDGs 関連予算は127本に及び、ほとんど全ての府省庁が関係しています。

■ スーパーシティ構想とSDGs

(図版)官邸ホームページよりhttps://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/supercity/openlabo/supercitycontents.html

 

SDGsの政策としての主流化を象徴する政策が「スーパーシティ構想」です。この構想の中軸である規制緩和部分については、2020年6月に国家戦略特別区域法の一部を改正する法律が成立しました。

上記の「骨太の方針2020」でも、「地域の取組を強化するため、先端的サービスの社会実装等と集中的な規制改革に取り組む『スーパーシシティ構想』の早期実現を図る」という項目がクローズアップされています。

これまでもスマートシティや近未来技術実証特区など様々なシティ政策がありましたので、また「屋上屋」を重ねるのかといった見方もあろうかと思います。しかし、これまでの政策はエネルギー・交通などの「個別」分野での取組や「個別」の最先端技術の実証などにとどまっていました。

政府によれば、「スーパーシティ」は、これらとは「次元」が異なります。「異次元」の政策として「丸ごと未来都市を作る」ものです。

また、注目すべきは、この構想はSDGsの実現も狙うもので、スーパーシティのロゴマークにはSDGsのロゴも入って、「J-Tech challenges SDGs」であるということです。

この構想により、 SDGs 未来都市の指定の成果も踏まえ、一気に世界に冠たるスーパーシティが生まれることが期待されます。政策の担当はSDGs未来都市も推進する内閣府地方創生推進事務局です。

この政策は「特区」制度を使うことにより規制緩和と絡めているところが最大の特色です。これまで、ドローン技術、5G技術をはじめいろいろな最先端技術を活用するにも様々な規制で対応できなかった部分を特区制度という規制緩和で対処するものです。通信分野では5Gの実装が始まっているのでこの政策は極めて重要です。

次のような領域(少なくとも5領域以上)を広くカバーし、生活全般にまたがる企画です(①移動、②物流、③支払い、④行政、⑤医療・介護、⑥教育、⑦エネルギー・水、⑧環境・ゴミ、⑨防犯、⑩防災・安全)。SDGsの目標年次と同じ2030年頃に実現される未来社会を念頭に置きます。

■ ニューノーマルとSDGsスーパーシティ

新型コロナウイルスで経済が大幅に減速した最中に、この法律が成立したのは、ニューノーマルに求められるテレワーク、遠隔医療、自動運転、ウェブ教育などでピンチをチャンスに変える絶好のタイミングにマッチします。思い返せば2年がかりで特区法案がようやく成立したのでした。

この構想を理解した、感度の良い自治体等はすでに手を上げており、現在55団体からアイデアが出ています。すでに先陣争いが始まっているわけです。多くのSDGs企業も高い関心を示しています。企業がバーチャルの展示ブースで常時SNS上に出展し自治体と事業者の間の橋渡しを目的とする「オープンラボ」の登録企業等は110(令和2年6月1日時点)に上ります。

このように政府の最新の動きに SDGs が絡んでくることが多いので、自治体や企業はSDGs を理解しないことには、政策への参画や事業への参画がかないません。また SDGs を理解している組織とそうではない組織では大きく差がついていきます。このように差がつくのが SDGs の「怖い」ところなのです。

 

※本内容は次のヤフー・オルタナの記事もご参照ください。

https://news.yahoo.co.jp/articles/777e08052d8b62e38f1fd39ed903d206e1515fef?page=1

今後とも、どうぞよろしくお願い申しあげます。

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