2022年1月13日
ステークホルダー・ダイアログ
https://www.nesic.co.jp/csr/engagement.html
NECネッツエスアイ ホームページから転載
ステークホルダー・ダイアログ
2021年ダイアログの概要
2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた企業の貢献に大きな期待が寄せられている中、改訂コーポレートガバナンス・コードの施行、ESG投資の本格化など、近年、企業のサステナビリティに対する取り組みは大きな環境変化に直面しています。
こうした変化を踏まえ、ESG/SDGsコンサルタントとして多くの知見とご経験を有する笹谷氏をお招きし、サステナブルな世界の実現に貢献し、社会から支持される企業であり続けるために必要な取り組みについて、当社代表取締役執行役員社長の牛島との対話を行いました。
実施日 2021年11月18日
場所 NECネッツエスアイ 飯田橋本社
出席者
- 社外有識者
笹谷 秀光 氏
(笹谷氏プロフィール)
1977年農林省(現農林水産省)。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て2008年退官。同年伊藤園入社。2010年〜2018年取締役、常務執行役員を経て2019年4月末伊藤園退社。2019年4月~2021年3月社会情報大学院大学客員教授。2020年4月~千葉商科大学・基盤教育機構・教授、博士(政策研究)。
現在、日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、特定非営利活動法人サステナビリティ日本フォーラム理事、宮崎県小林市「こばやしPR大使」、文部科学省青少年の体験活動推進企業表彰審査委員、未来まちづくりフォーラム実行委員長
- NECネッツエスアイ参加者
牛島 祐之 代表取締役執行役員社長
対話の内容
当社の現在のサステナビリティの取り組みとその評価について
(牛島)
2018年度に笹谷氏を招いて実施したダイアログをきっかけに、SDGsを当社の事業の中に組み入れて考えるようになった。2019~2021年度の中期経営計画「Beyond Borders 2021」もSDGsに沿ったフレームワークにしており、SDGsの達成目標年である2030年の当社のあるべき姿からバックキャストで考え、策定した。
さらに中期経営計画に合わせてマテリアリティの見直しを行い、そのマテリアリティを羅針盤として、3年間事業を推進してきている。マテリアリティを軸とした事業推進のステップは主に3つあり、1つ目は当社の目指す社会像について議論し、将来の絵を描いたこと。2つ目は、マテリアリティに具体的に取り組む上でのKPIを設定したこと。3つ目は、その成果として形を成してきた事業について、その進捗を管理すること、である。これらのプロセスによって、我々の事業そのものがSDGsに沿って歩み出したことで、SDGsが当社の事業活動の設計図のような存在になったと認識している。
本日はそういった当社の取り組みに対する評価、また他社事例なども含めてご意見をいただきたい。
(笹谷氏)
2018年度のダイアログの際、社会における貴社の事業のかかわりの全体像を示した図を見て、貴社は社会のあらゆる課題と接点があると感じた。貴社にはコミュニケーションを大事にするという理念があり、SDGsの考えに非常に親和性がある。以前からSDGsとの接点を可視化し、SDGsを事業に組み入れるというプロセスを早々に実行に移していたため、全社にその考えが浸透しつつあり、社員の皆さんが社会課題を理解し、自分なりに何かアクションを起こすことができているのだと思う。新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の拡大による大きな社会変動の中でも過去最高業績を更新したと聞いているが、組織改編も含め、これまでのそういった取り組みが実を結び、乗り越えることができているのだと感じる。社員の皆さんが経営陣の経営戦略を意識し実行する経営が重要である。
コロナは相当強烈な社会変革引き起こしているが、それはなぜかというと、経営のヒト・モノ・カネ・情報という4要素のうち、「ヒト」に影響を与える世界的な事象は、近年では初めてだからである。コロナ対応に右往左往した業界と、ある程度対応策が見えていた業界や企業に二極化しており、「K字」回復の状況になっている。同業の企業であっても状況は二極化しており、社会との接点と、社員のコンピテンシーの高さが明確に結果として表れたと私は見ている。貴社の場合は、コロナ対応のテレワークなどに必須のデジタル・ソリューションを提供するなど、明らかに右肩上がりである。貴社の経営力と、社員の力によって今の時代に求められたことに対応しており、貴社のソリューションのおかげで助かった人がたくさんいると感じる。この社会変革を乗り越えるという面で、貴社のパターンは、全社員が連携して付加価値をつくっていく「CSVパターン」として私の論文などで紹介させていただいている。
(牛島)
コロナは「ヒト」に直接影響を及ぼしたため、変化が自分事として掴めた出来事だったと感じる。
(笹谷氏)
おっしゃる通り、自分と自分の家族の事になっており、自分や自分を取り巻く人たちの健康、大げさに言えば人生について、正確な情報が欲しいというマインドが極めて強くなった出来事だった。物理的なことではなく、人々のマインドや価値観にも影響を与え、パラダイムのシフトが起こっていると思う。
(牛島)
先ほどのK字状況のお話しについて、現在の中期経営計画の期間(2019~2021年度)で当社はかなり成長することができたが、その一つとして、やはりコロナによる社会変革が大きく影響していると思う。厳しい環境変化に対して、技術革新を使って何とか乗り越えようということが世の中の動きとしても顕著になり、クラウド系のサービスが一気に動き出した。当社においても、当社の自社実践の取り組みは本当に社会に貢献できるということが社員に腹落ちして、さまざまなサービスを短期間で作り上げることに繋がった。そういった意味では、コロナは当社にとって新しい事業を創出していくきっかけになったと思う。
(笹谷氏)
貴社がZoomを日本で最初に導入したと聞いているが、今では生活に欠かせないほどの存在になって、大企業から中堅・中小企業まで、あらゆるところに浸透している。企業・人の困り事に対して、パートナーと共創し、Zoomだけではなく、さまざまなソリューションについてコミュニケーションして、カスタマイゼーションしながら解決策を伝えていくという顧客目線・寄り添い目線で動いている企業だと感じる。デジタルの使い方も含めて提供することで、働き方改革に関するソリューションが広がりを見せて、中堅・中小企業にも広がり、さらに自治体などにも広がる可能性があるのではないか。
(牛島)
当社の中期経営計画は、コミュニケーションを中心として社会に貢献していこうという方向性であり、その中で二つの柱がある。一つはクラウドサービスやAIなどのさまざまなデジタル技術をお客さまが使える形にしていく。もう一つは、インフラなど将来的に社会を動かす基盤になるであろう、5G本格化に向けた準備。この二つの柱をしっかり作ろうとしている。
コロナで加速したのはデジタル技術の活用で、例えばコミュニケーションが非常に必要とされる文教関係でもお役に立つことができ、そして企業においても、働き方関連の取り組みに変化が生じた。それによって、最終的には自治体にもそういった提案が受け入れられるようになった。もう一つの柱である5Gのインフラと相まって、これからの街や社会を新しく創っていくという、2030年に向けた将来の当社の方向性が具現化してきたと感じている。
2030年に向けたサステナビリティ(SDGs)経営の実装について
(笹谷氏)
5Gなどの先端技術は、ユーザーから見て、どのように使えるのか理解頂く必要性がある。そのため、私は5Gは“5P”の役に立つものとして伝えている。5Pとは、SDGsを盛り込んだ国連合意文書「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」の前文に記載されている。最初にPeople(人間)、2番目がProsperity(豊かさ)、3番目がPlanet(地球)、4番目がPeace(平和と公正)、それから最後にPartnership(パートナーシップ)である。SDGsを事業に当てはめて、これら5P全てに効果があるものが5Gだ、という見せ方ができるので、貴社の場合、5Gは5Pのどこに活かせるか考えていくことが大切だと感じている。経営においても5Gを5Pに活かすという考え方ができるし、社員浸透においても、社員がより一層当事者意識を持ち、本業の中でSDGsの達成に貢献していきたいという気持ちになる。貴社のように社員の力量がある組織は、SDGsの良さをもう一度改めて見直して、経営の中にSDGsを実装していく必要性があると思っている。
(牛島)
社内ではことあるごとにサステナビリティ(SDGs)をテーマとして話しているし、意識は高まってきていると思う。次のステップでは、自分がやっていることがどういった形でサステナビリティ(SDGs)に結びつくか、より具体的に認識する必要があると思っている。
(笹谷氏)
私が提案している「ESG/SDGsマトリックス」では、左側にESG(Environment, Social, Governance)の該当事項を並べ、個々の事業や活動がどのSDGsに関連するか17目標全てを示して網羅的に紐付けていく。その整理を経営の重要事項(マテリアリティ)の選定や改訂にも生かし、社会課題解決に向けた事業活動と連動したKPI設定を行うことで、企業として取り組むSDGs経営の全体像が見えるように整理していく。これにより、ESGを重視する投資家などのステークホルダーへの訴求力向上につながる。そのうえで推進責任者を明確化すれば、社内でもSDGsが自分事化していく効果がある。このようにマトリックスによる整理方法は外に内にも効果が高く、私が理論面でも実践面でも発展させてきたものだ。
(牛島)
当社は多くの事業が社会課題解決型の事業であるため、このような整理をしながら、より一層サステナビリティ経営の意識を高めていきたい。
(笹谷氏)
さまざまな取引先との関係の中で、SDGs化が進んでいる企業が増えてきていると思う。そのときに貴社がSDGsを深く理解していると、機会ロスを防止することができる。SDGsに関する本質的な会話がいたるところで行われる状況になった今こそ、改めて社員一人ひとりがSDGsへの理解を深めていくことで、企業経営としてのパワーをさらに強化することができる。
(牛島)
これまでも社員一人ひとりがSDGsを理解しようと努めてきたが、これからは全社でコミュニケーションによる共創を進め、より具体的な行動に移していくことに注力したいと思う。
(笹谷氏)
2030年に向けての貴社のアプローチ、現在策定中の次期中期経営計画に向けて課題などはあるか。
(牛島)
2030年に向けて、現中期経営計画がそのバックキャストとしての1回目の計画ということであり、次期中期経営計画はその第2ステップを作っていくということになる。コミュニケーションを通じて社会課題の解決に貢献していくという大きな目標は変わらないが、次のステップでは、さまざまなデジタル技術の活用の具現化ということがテーマになる。本日のサステナビリティ経営に関する助言なども取り入れて検討していきたい。
総括
(笹谷氏)
サステナビリティという概念を具現化したSDGsを経営にうまくビルトインすることによって、貴社の経営に進化が起こりつつあるということを感じて期待値も大変高まった。5Pについて世界中が深刻に考えている今、先端技術の共創に取り組んでいる皆さんが、様々なソリューションの展開によって、社会課題の解決に結びついて役に立つ存在になっていただき、それに伴って貴社が発展していくということに期待したい。
(牛島)
SDGsをサステナビリティ経営のフレームワークにして現行の中期経営計画をスタートしたが、今それがさらなる加速を始めていることから、本日の対話にあったようにさらに積極的に、もう一歩踏み出していくための方法を考えていきたいと思う。これからますます加速する本格的なサステナビリティ、SDGs経営について、我々は2歩3歩先を引っ張りながら推進できる企業になっていきたい。