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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。トヨタも急変貌!10年後に潰れないための「SDGs経営」とは(Forbes Japan Web2021/09/14)

2022年1月16日

Forbes Japan Webの記事の転載
 

SDGsを活用した「発信型三方良し」ビジネスを探る

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ビジネスパーソンの中には、「SDGsは本当にビジネスになるのか?」と疑問に思っている人も多いだろう。しかしそれは杞憂だ。

2017年のダボス会議のレポートは、SDGs関連で年間12兆ドル(約1300兆円)の経済価値と、最大3億8000万人の新規雇用の創出が見込まれると試算している。

特に2030年における市場機会が有望なのは、「食料と農業」「都市」「エネルギーと材料」「健康と福祉」の4つの分野。なかでも「モビリティシステム」「新しい医療ソリューション」「エネルギー効率」には注目だ。

「SDGs経営」のメリットは?


では、SDGsはビジネスとどのように結びつくのだろうか。

企業におけるSDGs推進は、「BDGs(Business Development Goals)」といわれる。実は、SDGsは、経営の4要素である「ヒト・モノ・カネ・情報」すべてに関連する目標だ。そのためSDGsに即した企業経営をすることが求められる。いわゆる「SDGs経営」である。

SDGsのゴールは、企業統治や環境課題への対応のみならず、働き方改革、優秀な人材の確保・採用、消費者対応、マーケティング、ブランディング、地域社会なども網羅するものだ。つまり、「株価水準」「ブランディング」「人材確保」などのすべての経営マターと関連付けられる。

「SDGs経営」のメリットは、対外的には「企業価値を高め、国際競争に打ち勝つことができる」こと。そして社内では、「社会問題解決型のイノベーションが期待でき、従業員のモチベーション向上にもつながる」ことである。

こうしたことから、SDGsは、単なる参照事項ではなく「重要事項」として扱われるべき目標であることがお分かりいただけるだろうか。実際に多くの経営トップが大きな関心を寄せていて、ビジネス界でも主流化している。

自社の中長期計画で何をすべきかをSDGsをヒントに考え、アクションしなければ「自社は10年後に潰れているかもしれない」という危機感を持つべきレベルだ。

CSRとの違いは「経営マター」かどうか


では、SDGsはこれまでの「CSR」とどう違うのか。それは、SDGsが「経営マター」であることだ。

その最大の理由が、ESG投資(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governance)の高まりだ。ESG投資家は、E・S・Gの各要素の判断にあたり「事業会社のSDGsへの貢献度」をひとつの指標として使っている。つまり、ESGとSDGsが「表裏の関係」になっているのだ。これは、SDGsが経営マターである「株価水準」にも影響するようになったことを意味する。

では上場していない企業や中小企業は関係ないのだろうかというと、まったくそのようなことはない。上場していない企業でも、何かしら上場企業との取引があるだろう。また、金融機関は融資などにあたりESGの視点でチェックしている。金融機関とつき合いのない企業も少ないのではないか。

さらに、SDGsは「世界の共通言語」なので、グローバルビジネスやグローバル化するサプライチェーンにも必須だ。

いち早く取り組んだのは「エリクソン」


さて、ここからは具体的な企業の取り組みを見ていこう。

世界を見ると、2015年9月にSDGsが採択された直後から、多くの企業がSDGsの達成に向けて取り組んできた。いち早くSDGsに対応してきた事例として、スウェーデンの大手通信機器メーカー「エリクソン」をご紹介したい。

同社が2016年3月に発表した持続可能性レポート『Ericsson Sustainability and Corporate Responsibility Report 2015』は、筆者にとっては衝撃的だった。SDGsの17のゴールの責任者を「アンバサダー」としてそれぞれ定めているのだ。SDGs が採択されてからわずか半年後のことで、日本の1、2周先を行っていた。世界企業の国際的ルールへの対応はいかにも速い。まさに「エリクソン・ショック」だった。

ちなみに、私は当時、役員をしていた伊藤園で直ちに同様の責任体制をひこうと思ったが、1年かかってしまった。エリクソン並みに早急に対応できていたのは、日本企業では住友化学などに限られた会社だけ。
 
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このようにSDGsを経営に取り入れる場合、まずSDGsのゴールを「ビジネスチャンスになるゴール」と、「リスク回避になるゴール」とで選別し、自社で重点的に取り組むゴールをピックアップする作業が必要だ。

エリクソンの場合、SDGsの17のゴールすべてについて社内の責任体制を示しているが、いくつかの「重点項目」を定めているグローバル企業もある。例えばユニリーバは、ゴール17の「パートナーシップ」をフラッグシップとして、すべての関係者に協働を呼びかけている。また、コカ・コーラは、ゴール6「水」とゴール5「ジェンダー平等」を重点項目にした。

急加速する「トヨタ」や「日立製作所」


日本で先陣を切って取り組んだのが、先ほども触れた住友化学。SDGsのゴールごとに責任役員を定めて社内でSDGsを推進した。2017年の政府の「ジャパンSDGs アワード」第1回では外務大臣賞を受賞している。

世界的に見ると出遅れ気味であった日本企業だが、ここに来て取り組みが加速している。例えばトヨタ自動車だ。同社は2年前から急変貌を遂げている。

同社は2019年6月に「サステナビリティ推進室」を設置すると、9月には「サステナビリティ・データ・ブック2019」を発行。SDGsの17のゴールへのアプローチをすべて掲載した。それも、これらのゴールに紐づいた「169のターゲット(具体的目標)」のレベルまで落とし込んでいる。さらに、2020年1月にはCSO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者)を設置した。

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こうした下準備をしたうえで、2020年3月には豊田章男社長が「SDGsに本気で取り組む」と宣言。その後、SDGsへの取り組みをまとめたウェブサイトを立ち上げ、SDGsのゴールに、同社が大事にしている「感動(ワクドキ)」を加えて発信している。
 
同社は、企業理念(パーパス)を達成できないと考え、SDGsを超えた目標「感動(ワクドキ)」をつくったのだろう。筆者はこれを「18番目のSDGs目標」だと考えている。

トヨタの狙いは、「自動車」から「モビリティ」の会社に切り替え、人々の「持続可能なライフスタイル」に貢献すること。また、そのことをSDGsという「共通言語」を通して世界に発信することだ。そうしないとトヨタも世界競争で生き残れないと思ったのだろう。このトヨタの動きを受けて、今、部品関連企業はSDGsの実践に追われている。もうひとつの例が、日立製作所だ。

同社は、2018年4月に『SDGs Report』(英語版・日本語版)を公開。その中でSDGsが日立の「ビジネス戦略」であることを明確に打ち出し、「Partnering for Innovation」(協創によるイノベーション)が日立製作所の役割だと明記した。「イノベーション」はSDGsのゴール9である。

日本の産業界も変化


そして今、これらの企業に刺激を受けて、日本の産業界が大きく変わり始めている。グローバル企業がこぞってSDGsに取り組む中で、国際入札をはじめ世界市場で蚊帳の外に置かれることに気が付き始めたのだ。
 

やはりトヨタ自動車や日立製作所のような基幹製品製造業や大規模プロジェクト企業、プラットフォーム企業から対応が求められると、進展が早い。非上場企業も中小企業も例外なしに、関係者に波及し裾野が広がっている。

このほか、「2020年東京オリンピック競技大会」や、2025年の「大阪・関西万博」などの官公需、関心の高いミレニアル世代・ポストミレニアル世代への対応など、様々なステークホルダーらの要請もある。

日本企業は直ちに「SDGsを経営に入れ込む」作業に着手し、本格的にSDGsを活用した経営を推進してほしい。

文=笹谷秀光

Forbe Japan Web の次のサイトからの転載

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