*この記事は(1)からの続きです。

主要政策の大集合となった「SDGsアクションプラン2022」

「SDGsアクションプラン2022」では、「2030 アジェンダ」に掲げられている 5 つの P(People(人間)、Planet(地球)、Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、 Partnership(パートナーシップ))に基づき、次の通り、重点的課題が整理されている。

「People 人間」については感染症対策と未来の基盤づくりが重点だ。 6月までの可能な限り早いタイミングでの新たな「グローバルヘルス戦略」策定、「女性版骨太の方針」等に基づく、女性デジタル人材の育成や「生理の貧困」への支援、女性の登用目標達成、女性に対する暴力の根絶など、女性活躍・男女共同参画の取組の強力な推進が挙がっている。

また、こども中心の行政を確立するための新たな行政組織を2023年中に設置することも掲示されている。

「Prosperity 繁栄」では成長と分配の好循環を目指す。ここに岸田政権が重視する 「デジタル田園都市国家構想」も出ている。また、これまで進めてきた「SDGs未来都市」に加え、新たに複数の地方公共団体が連携して実施する脱炭素化やデジタル化に関する取組に対する支援により、地方におけるSDGs達成に向けた取組を加速する。

カーボン・ニュートラルと海洋プラスチック

「Planet 地球」では、温暖化対策を成長につなげるクリーンエネルギー戦略を策定し、強力に推進していくことが重点だ。

海洋プラスチックごみ対策について、2月の国連環境総会で国際約束作りの開始を目指すほか、4月に熊本で開催する「第4回アジア・太平洋水サミット」や、「ポスト2020生物多様性枠組」に向けた議論への対応も重要課題である。

これらはいずれも正念場の政策展開だ。

平和とパートナーシップ

「Peace 平和」では普遍的価値の遵守に向けて、第8回アフリカ開発会議(TICAD)も通じ、日本の取組を推進していくとしている。

「Partnership パートナーシップ」では、絆の力を呼び起こすための、2023年のSDGs実施指針改定を念頭に、2022年中に幅広いステークホルダーとの意見交換を進め、SDGs達成に向けた取組を加速していくことが挙げられている。

SDGs政策予算は7.2 兆円

このようにアクションプランは、重要政策の大集合となっている。アクションプランは、SDGs 実施指針に基づき、2030 年までに目標を達成するために、「優先課題 8 分野」において政府が行う具体的な施策やその予算額を整理し、各事業の実施によるSDGs への貢献を「見える化」することを目的としている。

今回は、8 つの優先分野の課題毎に、2022 年に各府省庁が進める予定の取組案と予算額を取りまとめた。

予算化された案件のうち、令和 3 年度補正予算(11 月 26 日閣議決定)及び令和 4 年度当初予算政府案(12 月 24 日閣議決定)に含まれる総額は約 7.2 兆円(内数として予算額が特定できない施策については、合計額には含まない)となった。

「SDGsアクションプラン2022」の最大の特色の一つがこの予算リストを作ったことだ。項目数は合計554に上る。

もちろん SDGs の網羅性から政策関連を洗い出せばこれらに限定されないだろう。たとえばインフラの整備のための公共予算や、社会保障費など既存の政策も入れれば膨大になる。今回は8 つの優先分野の政策に絞っている。それでもかなり多くの項目や予算が投入されている。SDGs が政策において主流化していることを反映したものとなった。

そのうえ洗い出された政策や予算項目を各府省順に表の縦軸に掲示し、横軸にSDGsの17目標を目標1、2,3,………目標17まですべて並べて各項目とSDGs目標との関連性を丸印で整理したマトリックスをつくった。SDGs目標との関連性の強さは項目ごとに違うであろうが、マトリクスの形で示したことにより網羅性と一覧性が出た。

これにより、どのSDGs目標に関する政策が手厚いかのなど、様々な分析を誘発する。2022年中に幅広いステークホルダーとの意見交換を進めることになっているのでその議論の素材にもなりうるだろう。

SDGsマトリックスの意義

筆者は、企業向けに 「ESG/SDGsマトリクス」をSDGs経営支援ツールとして提唱している。

SDGs の17目標への取り組みを網羅的に「見える化」するために、縦軸にはESG投資家向けにE、S、Gに分けて活動を整理し、各活動がどのSDGsに該当するかについて横軸にSDGsの目標1、2,3,………目標17まですべて並べて整理するものだ。

最近はSDGsの169のターゲットレベルまで踏み込んだマトリックスの作成を支援しており、さまざまな企業に実践が広がってきた。

よくある見せ方は、活動に関係する SDGs のマークだけ並べる方式で、これを筆者は「さや寄せ型」と呼んでいるが、これではすべての目標との関連を検証したことにならない。

その結果、企業にとって都合の良い目標だけを並べたのではないかという「 SDGs ウオッシュ」の批判が起こりやすい。そこで、資料としてはスペースをとるものの、1~17目標全てを網羅するマトリクスの形をとるべきだと主張してきた。

今回、政府がマトリクス整理をした事を評価したい。今後は、マトリクスを、17目標へのあてはめから一歩進め、ターゲットレベルで示すところまで進化させることを期待する。