2022年11月26日
熊本市は、熊本城のふもと、路面電車が走る路面の緑地化を進めるなど、環境にやさしい街として知られる。2019年には内閣府が定める「SDGs未来都市」にも選定されている。
県庁のある熊本市だけでなく、県もまた蒲島郁夫知事のもと、SDGs達成に向けて尽力している。この10月29日には、SDGsに積極的に取り組む県内の企業・団体を登録する「熊本県SDGs登録制度」の登録証交付式を開催し、第1期として、肥後銀行や熊本銀行、熊本大学など442の事業者が登録された。
筆者は、この交付式で記念講演をするため熊本県を訪れたが、その際、蒲島知事に話を聞く機会を得た。今回は、蒲島知事の話も踏まえ、熊本県におけるSDGsに対する真摯な取組について紹介したい。
路面が緑地化された路面電車
蒲島知事は、「聞く力」を感じさせる穏やかなお人柄をお持ちの方。
そんな知事が考える最大の使命は、コロナ禍への対応と、2016年の熊本地震と2020年の豪雨災害からの創造的復興である。
それらを推進するため、今年3月に発表した「新しいくまもと創造に向けた基本方針」では、すべての取り組みの基本として「SDGs」を掲げ、「誰一人取り残さない くまもとづくり」を進めていくと表明した。
蒲島知事(左)は、筆者との会談で「『逆境の中にこそ夢がある』という信念のもと、SDGsをベースに『県民総幸福量の最大化』を目指します」と力強く語った
その「誰一人取り残さないくまもとづくり」を推進するための、蒲島知事の肝入りの施策が、今回第一期事業者の交付式を行った「熊本県SDGs登録制度」だ。
今年1月に、県企画振興部長の陣頭指揮で創設し、これまで政策審議監、企画課長、企画課メンバーによるチームが、総力で制度設計・運営にあたってきた。制度の検討段階から、熊本市、水俣市、小国町などの自治体や、肥後銀行、熊本銀行、三井住友海上といった金融機関なども参加してつくり上げた。
交付を受けた企業や団体の登録期間はまず3年間、その後も更新可能だ。蒲島知事は「第一期にもかかわらず、多くの事業者にご登録いただけた。これは、県民のSDGsへの熱意の高さの反映ではないか」と語る。また2030年までに1000事業者の登録を目標にしているという。
県庁のある熊本市だけでなく、県もまた蒲島郁夫知事のもと、SDGs達成に向けて尽力している。この10月29日には、SDGsに積極的に取り組む県内の企業・団体を登録する「熊本県SDGs登録制度」の登録証交付式を開催し、第1期として、肥後銀行や熊本銀行、熊本大学など442の事業者が登録された。
筆者は、この交付式で記念講演をするため熊本県を訪れたが、その際、蒲島知事に話を聞く機会を得た。今回は、蒲島知事の話も踏まえ、熊本県におけるSDGsに対する真摯な取組について紹介したい。
路面が緑地化された路面電車
「熊本県SDGs登録制度」とは?
そんな知事が考える最大の使命は、コロナ禍への対応と、2016年の熊本地震と2020年の豪雨災害からの創造的復興である。
それらを推進するため、今年3月に発表した「新しいくまもと創造に向けた基本方針」では、すべての取り組みの基本として「SDGs」を掲げ、「誰一人取り残さない くまもとづくり」を進めていくと表明した。
蒲島知事(左)は、筆者との会談で「『逆境の中にこそ夢がある』という信念のもと、SDGsをベースに『県民総幸福量の最大化』を目指します」と力強く語った
その「誰一人取り残さないくまもとづくり」を推進するための、蒲島知事の肝入りの施策が、今回第一期事業者の交付式を行った「熊本県SDGs登録制度」だ。
今年1月に、県企画振興部長の陣頭指揮で創設し、これまで政策審議監、企画課長、企画課メンバーによるチームが、総力で制度設計・運営にあたってきた。制度の検討段階から、熊本市、水俣市、小国町などの自治体や、肥後銀行、熊本銀行、三井住友海上といった金融機関なども参加してつくり上げた。
交付を受けた企業や団体の登録期間はまず3年間、その後も更新可能だ。蒲島知事は「第一期にもかかわらず、多くの事業者にご登録いただけた。これは、県民のSDGsへの熱意の高さの反映ではないか」と語る。また2030年までに1000事業者の登録を目標にしているという。
細かな議論を生む「チェックリスト」
地方自治体におけるSDGsの推進は、地元の大手企業はもちろん、中堅や中小の企業を巻き込みながら、ローカライズした形で定着させていくことが重要だ。
熊本県SDGs登録制度の目的は、県内の企業や団体が、SDGsと事業活動との関連について「気付き」を得るとともに、具体的な取り組みを進めてもらうこと。
SDGsの普及を促進し、かつ新たな価値の創造を促す先進企業の取り組みを「見える化」することで、持続可能な社会とSDGsを原動力とした地方創生の実現を目指している。
登録に際しての主な要件は、1. 2030年までに「目指す姿」や環境・社会・経済の3側面における重点的な取り組みを明確に示していること、2. 自らの活動と、SDGs の17のゴール及び169のターゲットとの関連付けがなされていることの2点だ。
先駆的なのは、2の要件で、SDGsの17ゴールのみならず169のターゲットまで関連付けた細かいチェックリストをつくらせるところだ。登録申請書にもターゲットがしっかりと記載されている。必然的に組織内でもこれらのターゲットを整理して、細かな議論を展開することになる。
169のターゲットレベルまで踏み込んでいるので、企業内でターゲットごとの担当を決めていけば、SDGsが企業内の各部署に浸透していく仕組みだ。
登録後のフォローにも期待
さらに、この制度では、企業の体系的な取り組みが、対外的に発信されるという効果もある。登録されると、SDGsの達成に積極的に取り組む企業・団体として、県のホームページで紹介される。
具体的には、各事業者の「熊本県SDGs登録申請書」と「SDGs達成に向けた取り組みチェックリスト」が掲載される。県のお墨付きを得られるだけでなく、ホームページを通じたPR効果も期待できるのだ。また今後は、市町村や金融機関などによる伴走支援も検討されているという。
10月1日には第2期登録の申請受付を開始。10月31日に締め切られたが、前回を超える応募数となっているそうだ。
こうした制度は、自治体側の設計のみならず、その後の運営やフォローアップがとても重要だ。実際に企業がSDGsを経営に取り込み始めると、現場ではさまざまな疑問もわいてくる。
その際に、自治体が丁寧に指導することが大切になる。熊本県の場合はオープンな雰囲気と熱意が感じられ、登録後のフォローも大いに期待できそうだ。
「くまモン」がSDGs推進のカギに
実は、熊本県SDGs登録制度には、もう1つ大きな「特典」がある。それは、登録事業者はPRマスコットキャラクター「くまモン」をあしらったオリジナルロゴマークを、名刺などに使用できるのだ。
くまモンは、2010年から熊本県が「熊本サプライズ」キャンペーンにおいて展開している熊本県PRマスコットキャラクター。2011年の「ゆるキャラグランプリ」では王者にも輝いている。
登録されると使用できる「くまモン」のロゴマーク
2020年には10周年を迎え、熊本県の「営業部長兼しあわせ部長」として活動している。また同年には、くまモンを利用した商品の売上高が国内外で1698億円を超え、9年連続で過去最高を更新した。海外でも人気を集めるなど最も経済的に成功しているご当地キャラとなっている。
そのくまモンがまた、こうした熊本県のSDGs施策を支えているのだ。式典やロゴマークなど随所で起用され、多くの人たちを巻き込むための「カギ」ともなっている。
今回のSDGs登録制度においても、くまモンを積極的に起用することで、国内外の多くの人にアピールできる可能性を秘めている。
キャラクター自体のかわいさはもちろんだが、認知度が高いため、こうした仕組みに対しても多くの共感が得られる。今後もさまざまな関係者がSDGsを使って連携していくための有効な活動の共通基盤(筆者は「プラットフォーム」と呼んでいる)となるだろう。効果的なくまモンの活用事例が生まれ、県内、さらには全国にも波及していくことを期待したい。
SDGs×くまモンで国内外への波及も?
今回の交付式、式典後の記念撮影では出席した275の事業者が一堂に会した壮々たるものとなり、その結集力の強さも感じさせた。
当日残念ながら欠席となった企業や団体も含め、今回登録された442の事業者が先陣となって模範事例を示して、一気に県内の各企業への刺激として展開していって欲しい。
そしてその「熊本 SDGs モデル」が、世界的な共通言語である「SDGs」と、くまモンの「共感力」との相乗効果で、国内外に拡散されていくことを願っている。