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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。元ミステリーハンター末吉里花が、「エシカル」に目覚めた理由:Forbes Japan Webより

2023年10月31日

2023.10.29

Forbes Japan Web より転載

https://forbesjapan.com/articles/detail/66818

元ミステリーハンター末吉里花が、「エシカル」に目覚めた理由

 
 

エシカル協会 代表理事、末吉里花

 
最近、「エシカル(ethical)」という言葉をよく見かけるようになった。

エシカルという言葉は、英国での「エシカル・コンシューマー」が発祥で、人や地球環境(動物を含むすべての生き物を含む)、社会、地域に配慮した考え方や行動のことである。フード、トラベルに続き、ファッション分野でも取り入れられている。

そんなエシカルを広めるための団体を日本で初めて立ち上げたのが、一般社団法人エシカル協会の代表理事・末吉里花氏。2015年の設立当時はエシカルと名のつく団体は他になく、日本におけるエシカルのパイオニア的存在となっている。

今回は、筆者が所長を務める企業コンソーシアム「SDGs研究所」で、10月6日に行われた末吉氏の講演と筆者との対談内容から、エシカルの本質を紐解く。

エシカルの「エバンジェリスト」

末吉氏がエシカルに興味を持ったきっかけは、ミステリーハンターとして出演していたテレビ番組「日立 世界ふしぎ発見!」(TBS系)だった。2004年に登頂したキリマンジャロで、ショッキングな光景を目にしたのだ。

キリマンジャロの山頂には、太古から氷河が残っている。しかし近年の地球温暖化によって、本来の大きさの約9割が溶けてしまっていた。その雪解け水を使っている麓の住民たちの生活にも影響が出ていた。

こうした現状を目にして、「世界で起こっているさまざまな問題を人々に伝え、みんなで解決策を考える活動を始めたい」と、エシカルのエバンジェリストになった。

末吉氏は、一般的なエシカルの定義について「法的な縛りはなくても、多くの人たちが正しいと思っていること。本来、人間が持つ良心から発生した社会的な規範」説明。

「私たちは、エシカルをある意味“哲学”だと捉えており、エシカル×SDGs≒サステナビリティの向上であると考えています。エシカルな哲学をもったうえでSDGsの達成を目指す中で、はじめてサステナビリティが向上するのです」

大和言葉とエシカル

末吉氏によると、日本にはエシカルにつながる言葉がいっぱいあるという。

おたがいさま
おもいやり
もったいない
足るを知る(少欲知足)
お天道様が見ている
三方よし
など。

横文字をただ発信するだけでなく、日本人の“腹に落ちやすい”表現は何なのかということを常に考えながら説明しないと、上滑りになる。
 
実は、かつて消費者庁が「倫理的消費」調査研究会で「『倫理的消費』(エシカル消費)の趣旨が伝わる日本語表記案の募集」、いう全国アンケート調査を行ったことがある*。エシカルは、政府の消費者基本計画で「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮した消費行動」と定義されているが、これが難しいからと募集したのだ。

この調査結果が興味深い。「思いやり消費」や「つながり消費」などが比較的多く、キーワードとしては「未来」、「優しい」、「社会」、「つながる」、「心」といった様々な言葉が挙げられた。

これを受け、ひとつの名称で言い換えることは難しいので、テーマ・対象となる世代などに応じてふさわしい言葉を使い分けることが望ましい、との結論になった。

エシカルを推進するためには?

では、エシカルを推進するために、どのようなことをすれば良いのだろうか。

末吉氏は「環境・社会・経済のそれぞれの側面をホリスティック(包括的)に見ること」を強調する。製品・サービスを、「だれが、どこで、どうやって」という視点で、それらの背景を知ることが大事だという。なぜなら「People care when they know(人は知れば、気にかける)」と要約した。

末吉里花氏の登壇スライドより

企業におけるサプライチェーン・マネジメントに関するポイントは、次の5つである。

1. 消費者に選ばれないようなものはつくらない
2. 調達に関する問題発生時のレピュテーション(評判)・ダメージが非常に大きいというリスクを把握する
3. 企業規模を問わず、経営マターとしてサプライチェーン・マネジメントに取り組む
4.常に世界情勢の分析を怠らない
5.以上を経営問題として経営層が把握する

エシカル消費とSDGs

消費者に製品・サービスの背景を知ってもらい、エシカルを広めていくためには、起業が的確に透明性の高い情報開示をすることが重要だ。SDGsでいえば、目標12の「つくる責任 つかう責任」のうち、消費者がどう「つかう責任」を果たすかが要諦だが、情報なしには選べない。末吉氏は「顔の見える、物語がある消費を心掛けること」と表現する。

エシカル協会では、2022年の6月に『エシカル白書』を出版した。実践事例も満載だが、白書の目玉となるのが日本におけるエシカル消費動向調査だ。

調査では、エシカルな商品・サービスについて「これまで購入したことがないけれども、今後は購入したいと思っている人」が6割近くいることがわかった。これは、それだけエシカル消費のポテンシャルが高く、企業にはエシカル消費という新しい市場を創出していく価値がある、ということを示している。
 
最近スウェーデンで視察したという末吉氏 (c)一般社団法人エシカル協会

最後に、エシカル協会による、次のメッセージをご紹介いただいた。

エシカルとは、「エいきょうを シっかりと カんがえル」

「消費者が、自分の消費行動の影響をしっかりと考えるようになれば、それは社会が変わる後押しになるからです」と末吉氏は締めくくった。

 

文=笹谷秀光

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