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「三方良し」通信

笹谷秀光の「三方良し」通信。ESG/SDGs支援ツール「笹谷マトリックス」とは何か

2025年1月24日

ESG/SDGs支援ツール「笹谷マトリックス」とは何か

 これまで、筆者は、伊藤園での実践に加え、セイコーエプソン、熊谷組、スカパーJSAT ホールディングス、NECネッツエスアイ、モスフードサービス、DCM ホールディングスなど数々の企業でSDGs経営を支援してきました。

 中でも特にご参照していただきたいのが、「ESG/SDGs マトリックス」です。

 筆者は、サステナビリティの体系化に対処するため、実務経験を通じ、ESG項目とSDGsの各目標との関連性を一覧できる「ESG/SDGs マトリックス」を開発しました(下記図版)。これは、社内外に効果的に訴求するための、「SDGs 経営支援ツール」といえます。

 筆者の監修により、同マトリックスは幅広い業界・企業で、すでに20社程度の実績があり、最近は「笹谷マトリックス」と自ら呼称しています。

 筆者がマトリックス作成の監修をさせていただいた主な企業は次のとおりです。

 モスフードサービス(外食業)、NEC ネッツエスアイ(ICT 業)、熊谷組(建設業)、スカパーJSAT ホール ディングス(衛星,メディア)、DCM ホールディングス(小売業)、KNT-CT ホールディングス(旅行業)、NEXCO 東日本(高速道路事業)、日本道路(道路整備)、ミルボン(美容業)、日本調剤(調剤薬局事業)。非上場企業の事例 として日本製紙クレシア(日用品)と YKK AP(建設資材等)。

 書籍『競争優位を実現するSDGs経営』では、マトリックスの効果については、経営層と直接意見交換した内容も示しています。

 

 

     「ESG/SDGsマトリックス」と最新課題のイメージ

 

みんなが悩む社内浸透へのヒント

 サステナビリティで多くの方が悩んでいることの一つが「社内浸透」です。

 「ESG 経営」という表現もよく見ますが、ESG では社員への紐付けがしにくい。では、ESG 投資家にも響き、社員を含め他の関係者にも伝わりやすい方法は何か? それが、SDGs です。

 SDGs は世界共通言語なので、対外アピールに使いやすい「ツール」ととらえることができます。つまり、SDGs は投資家を含めた関係者への「アピール項目」であり、一方 ESG は投資家向けの「チェック項目」であると理解できます。

 ESG のみを使ったり SDGs を「浅く」使ったりする(「SDGs に貢献」とだけ総論で言う、マークだけ列記するなど)ときの最大の課題は、社会課題の社員への「紐付け」が進まないことです。

 

 よく見かける整理は、マテリアリティの項目ごとに SDGs のマークを並べるものです。筆者はこれを「サヤ寄せ型」と呼んでいます。まだ SDGs の浸透度が低かった2017年頃ならともかく、今やこの整理方法では差別化できない。上記で述べた ESG/SDGs マトリックスのような効果は得られない。ESG/SDGs マトリックスは紙幅を取るのが難点ですが、訴求効果が大きいので統合報告書などで「見開き1ページ」割くだけの価値が十分にあるのです。

 一方、ESG は、投資家対応が軸になるので、経営者や株価対応セクションの話となりがちで、社員には紐付けしにくい。また、SDGs もターゲットレベルまで整理しなければ、社内での「自分事化」が進まないのです。

 この結果、経営者からよく聞くのが、ESG や SDGs を導入したのに一向に社内浸透しないという悩みです。社員に紐付かない原因にようやく気が付き始めた企業が多いと思います。

 ESGという用語を使うのか、SDGsという用語を使うのかという言葉をめぐる「混乱」もあります。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの ESG投資が SDGs を経営マターに押し上げて、けん引してきたのに、ESGという用語に惑わされ、皮肉な結果になっているのです。

 

 GPIF の資料でも、明確に「ESG投資」と企業の「SDGs経営」を対比しています。経済産業省も、「SDGs経営/ ESG投資研究会」でこの会合のタイトルの通り、事業会社は「SDGs経営」、投資家は「ESG投資」と使い分け、「SDGs経営ガイド」を発表しました。これは望ましい整理だと考えます。

 

 筆者としては、「○○経営」と銘打つのは経営層の「好み」もあるし、企業の置かれた状況や戦略から選べば良いですが、社外への訴求効果や社員への紐付けの観点からは「SDGs 経営」という表現をお薦めしたいと思います。

 

「発信型三方良し」のSDGs版

 

 的確に発信するため、「発信型三方良し」のSDGs版の実践が重要です。世界共通言語のSDGsが気付きのための羅針盤になりうるのです。

               

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